2022年12月15日

散歩時間 その日を待ちながら

 コロナ禍でささやかな生活が一変してしまった普通の人々を描いた群像劇。2020年11月のたった1日に絞って、コロナ禍の日常を淡々とつづった作品は今までなかったような気がします。

 作品情報 2022年日本映画 監督:戸田彬弘 出演:前原滉、大友花恋、高橋努 上映時間:95分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2022年劇場鑑賞336本



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
 【ストーリー】
 コロナ禍で生活が一変した2020年11月17日の日本。新婚の亮介(前原滉)とゆかり(大友花恋)は披露宴も新婚旅行も中止となり、亮介の先輩、真紀子(柳ゆり菜)の田舎の家でごく親しい友人だけのお祝いをしようとしていた。久しぶりのリアルでの飲み会に一同は盛り上がる。タクシー運転手の淡路(高橋努)は妻が里帰り出産しており、感染を恐れてまだ自分の子供に直接会うことができない。

 
中学3年生の鈴(佐々木悠華)は修学旅行も文化祭も中止になり、中学最後の年の思い出が何もないことに悩んでいた。そこへ、憎からず思っていた幼馴染の光輝(山時聡真)とばったり出会う。ウーバーの配達員をしながら役者への夢を捨てられない片岡(アベラヒデノブ)は、目標としていた舞台のオーディションがコロナで中止になり愕然とする。コロナで生活が一変しても、だれしも生きていかなければならない。

 【感想】
 散歩時間とは、コロナにより社会の速度が突然緩やかになり、自分や家族について考える機会ができた散歩するようなゆっくりとした時間の流れをいうそうです。ただ、コロナの影響が完全になくなる「その日」はいつのことになるかわかりませんが。自分自身、2020年は前職を退職してぽっかり時間が空いたこともあり、先行きが見えないぼんやりとした不安の中で生きていました。4組の登場人物たちの心情は、当時を生きた人なら思い当たる節があるでしょう。

 コロナに真正面から取り組んだ邦画は「Ribbon」、「茜色に焼かれる」ぐらいしか思い出せません。中でも本作は、普通の人たちのたった1日に絞った点が特徴的。また、リアルさ重視で、大仰な演出や驚くようなハプニングが何年、何十年かたったあとに、貴重な史料として扱われるかもしれません。

 戸田監督の説明をあまりせず、抑えた演出が本作にはぴったりです。例えば、淡路はコロナで前職を退職し、タクシー運転手に転職しました。そのことが負い目となっていることも、妻の実家に顔を出せない理由の一つになっています。そこに、経営している焼鳥屋が倒産した男(池田良)を客として乗せます。普通だったコロナにひどい目にあった同士で話が盛り上がるような演出をとりそうですが、決してそんなことはしません。意図して盛り上げるのを排除しているとか。

 また、亮介の結婚パーティーでも、先輩風をふかす稲田(中島歩が好演!)が結婚とはかくあるべきだと偉そうに語ります。しかし、その一方で、コロナ禍なのにリアル飲みをしていることを怒る妻からの電話に頭が上がりません。こんな、ごく普通の人の日常の積み重ねで世界ができている。当たり前のことに気づかせてくれます。

 各登場人物は演じる巧さよりも、リアルな素朴さを出したような感じが多い。若い中学生の2人も含めて、本当に隣にいそうな息遣いを感じさせます。そして、しし座流星群というアイテムがうまく物語に溶け込んでいる。映像、演出とも押しつけがましさがないのがいいみんなが先行きが見えずにもがいている。でもちょっとずつ前へ歩き出そうとしている。生きているって悪くないな、そんなふうに寄り添ってくれる秀作でした。

posted by 映画好きパパ at 06:05 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。