2022年12月26日

かがみの孤城

 辻村深月のベストセラー小説を「クレヨンしんちゃん」の劇場版で知られる原恵一が手掛けたとあり事前の期待も高かったのですが、実際に観たらがん泣き。泣きすぎてあたまが痛くなるほどでした。

 作品情報 2022年日本映画アニメ 監督:原恵一 声の出演:當真あみ、北村匠海、芦田愛菜 上映時間:116分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:Tジョイ横浜  2022年劇場鑑賞346本



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 【ストーリー】
 中学1年のこころ(声・當真あみ)は学校のいじめで不登校となっていた。心配した母(麻生久美子)はフリースクールに連れていき、担当の喜多嶋(宮崎あおい)も親身になるが、こころは一人では家から一歩もでることができなかった。

 4月のある日、こころの部屋の姿見が光だし、こころは中に吸い込まれてしまう。その先には孤島にある大きなお城と、狼のお面をかぶった小学校低学年くらいの少女(芦田愛菜)がいた。自分のことをオオカミさまと呼ぶ彼女の案内で場内にはいったこころは、同年代の少年少女6人と出会う。オオカミさまはこころたちに城内に隠されてある願い事のかなう部屋をみつければ、なんでも願いがかなう。ただし、期限は来年3月までと言い放つ。それぞれ願いのあるこころたち7人は、戸惑いつつも城内で冒険を始めるのだが…

 【感想】 
 映画を見る直前に、友人から勧められて原作を読みました。上下ある原作をうまく2時間弱でまとめたと思います。原作ではところどころでてきたヒントになるような描写や、各人の前半の心理描写がごっそり削られましたが、クライマックスは驚くほど原作を映画向けに昇華しており、さすが原監督。ビジュアル、音楽があるため、僕の想像力をはるかに上回る感動を得て、やっぱ映画は総合芸術だと思ってしまいます。

 こころがいじめにあったのは理不尽な理由でした。でも現実には理不尽なことというのは転がっています。大人だったら避けられることができるけれど、学校生活がほとんどすべてを占める中学生にとって、それは無理なこと。引きこもってしまったこころと、彼女に手を差し伸べようとする母親や喜多嶋先生との距離感がとんでもなく、大人と子供の世界の違いに悲しくなります。

 しかし、大人たちとは関係を結べなくても、こころは城で出会った同年代の少年少女たちとしだいに仲間になっていきます。実は他の子供たちもそれぞれ理由があって、中学校に通えていません。原作や映画の感想で7人がもっと早くから打ち解け合わないのかという疑問もでていましてけど、そういう感想を持つ人って幸せな人なんだろうなあ。心に傷をおうと、これ以上傷を負いたくなくて他人とコミュニケーションをとることに用心深くなってしまうわけで、ぼくはこころたちの関係性が非常にリアルに思えました。

 さらに7人の性格はそれぞれ違っています。逆にいうとこれだけで性格がばらばらでも不登校に陥ってしまうというのが日本の教育であり、もっといえば、大人になってもブラック企業とかパワハラとか心の傷をうけて出社できなくなる人もいるわけです。それがまったくの他人事としか思えない人と、実際に体験したり、僕のように体験しなくてもあと一歩でそううなりそうになったりした人とでは、受け止め方が違うのだろうな。もう一ついうと、中学生というのは大変象徴的ですけど、大人にとってもこころたちのような理不尽な目に合う可能性はあるわけで、本当に子供だけでなく大人も深く鑑賞できる極上のアニメといえましょう。

 お城はスタッフがドイツに取材にいったほど本格的。各人にあった服装、キャラデザもしっくりきます。唯一、こころが主人公なだけに割と美形で、原作ではこころが美人だとあこがれる萌(池端杏慈)よりも美人に見えたのが欠点かな。あと1カ所作画が崩れたのではと思えるところもありました。けれども、全体の完成度からするとそういった欠点は些細なこと。とにかくクライマックスはアニメででしかできないスケールを感じさせて、心をうちました。

 声優は當真あみをはじめとする若手、城で出会う仲間の政宗役の高山みなみ、嬉野役の梶裕貴といったベテラン声優、そして、麻生、宮崎、芦田といった実写の一線級がうまくかみあっています。當真は当初ぎこちない印象をうけましたが、それこそコミュ障のひきこもりという役柄にぴったりで、仲間と出会って成長するこころにあわせて、どんどん彼女の声が耳に心地よく聞こえてきました。このへんもアニメならではの楽しみ方です。
posted by 映画好きパパ at 06:02 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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