2022年12月27日

夜、鳥たちは啼く

 佐藤泰志原作、城定監督、山田裕貴、松本まりかの組み合わせで、底辺に生きる人たちをこんなに優しく包む作品ができると思いませんでした。年の瀬にふさわしい傑作です。

 作品情報 2022年日本映画 監督:城定秀夫 出演:山田裕貴、松本まりか、森優理斗 上映時間:115分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ  2022年劇場鑑賞347本



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 【ストーリー】
 売れない小説家でバイトで食いつないでいる慎一(山田裕貴)は同棲していた恋人の文子(中村ゆりか)と喧嘩別れをしてしまい、むしゃくしゃしていた。たまたま知人で離婚したばかりの裕子(松本まりか)と幼い息子のアキラ(森優理斗)が住む場所のないことを知り、母屋を裕子に貸し、自分は離れに住むことになる。

 母子と慎一の不思議な半同居生活が始まり、アキラは父親代わりに慎一になついていく。それとともに互いに深入りすることを意識的に避けていた慎一と裕子の関係も変わっていき…

 【感想】
 小説家、佐藤泰志は亡くなって30年以上たちますが、「草の響き」「そこのみにて光輝く」など2010年以降、何本も映画化されています。いずれも底辺近いところに住む庶民の哀感を醒めたタッチで描いたもので、なかなかシビアな現実が提示されるものも結構あります。さらに、変化球の多い恋愛映画のイメージが強い城定監督、そしてアクの強い役柄の多い山田、松本の主演ということで、結構、悲惨な生き方がこれでもかと見せられるのではと予想していました。

 しかし、確かに生きづらく大変な目に合う二人ですし、アキラも小学校で軽いいじめにあっていますが、疑似家族のつながりが互いを支えてくれます。どん底に落ちる一歩手前で救ってくれるというのでしょうか。「そこのみにて〜」はどん底に落ちてからの一筋の光が印象的ですが、本作はどんなにつらくて大変な人生でも、優しさ、救いがあることを教えてくれます。

 シングルマザーだとしって裕子のパート先で言い寄ってくるおっさんたち、小説家として目がでなくて苦悩しつつ、生活のために派遣のコピー修理業でしのぐ慎一。ともに
生きることのしんどさを伝えてくれます。公園で一人ぼっちのアキラもそう。でも、3人が寄り添って、それこそ弱い者同士でも助け合える、心のつながりがあることの大切さがストレートにつたわってきます。心だけでなく大人2人の性愛はもちろん、アキラが伸一と裕子に両手をにぎってもらいながら歩くなど、肉体的なつながりの強さも教えてくれます。

 山田と松本はさすがの演技。共演は何度もあるそうで、ラブシーンや喧嘩のシーンも含めて息はぴったり。さらに子役の森と中村ゆりかが美味しいところをもっていきました。子役の芸達者ぶりは目を見張るものがありますが、それこそ子役から見ている中村ゆりかが、こんなやさぐれて色気のある女を演じられるのかというのも驚き。裕子の元夫役のカトウシンスケや口だけ偉そうな先輩小説家の宇野祥平など脇役の配役も見事でした。

 佐藤原作にしては珍しく、函館ロケでなくて埼玉・飯能ロケですが、タイトルになっている鳥たちの啼き声を含めて、雰囲気はいかにものかんじ。また、山田はクリスマスの夜にツイッターで一般の観客と本作についての感想を語り合っており、彼の本作への思いの深さがわかって好感をもてました。
posted by 映画好きパパ at 06:10 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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