2023年01月07日

近江商人走る

 「鬼が笑う」の三野監督なのでシビアで陰惨な作品と思いきや、商人からみた王道時代劇にアイドルショーも入るアナーキーな作品。新春からスカッと楽しめました


 作品情報 2022年日本映画 監督:三野龍一 出演:上村侑、筧利夫、黒木ひかり 上映時間:114分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ港北ニュータウン  2023年劇場鑑賞2本



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 【ストーリー】
 江戸時代、両親を亡くした少年銀次(上村侑)は近江の米問屋・大善屋に丁稚奉公する。主人の伊左衛門(筧利夫)からは商才を見込まれたが、人間関係に疎い天然なところがあり、大善屋の一人娘の楓(黒木ひかり)や先輩丁稚の蔵之介(森永悠希)からあきれられていた。

 大善屋は屋号の通り、町の困った人を助けており、銀次の奇想天外のアイデアが役に立っていた。ところが、悪徳奉行(堀部圭亮)から求められた賄賂を断った大善屋は、奉行と大善屋のライバルで蔵之介の父柏屋(矢柴俊博)の罠にはまり巨額の借金を抱えることに。1月以内に借金を返せなければ店はつぶされてしまう。そのとき銀次はとんでもない金儲けの方法を考えだし…

 【感想】
 別々の場所で値段が違うことを利用して金儲けすることをアービトラージといい、現代の金融でも行われています。また、江戸時代の米問屋は世界で初めて先物取引が行われた大阪・堂島の米相場を中心に巨額のカネが動いていました。銀次は堂島と大津の値段の差を利用して大儲けすることで、主家の借金を返そうというのです。

 序盤に百姓だった銀次の父(大橋彰)が過労で亡くなり、面倒を見てくれた薬屋の喜平(村田秀亮)も侍に暴行を受けるなど、身分社会の陰惨な厳しさが描かれました。また、事前に江戸時代の金融取引を初めて映画化するというので、商人が知恵と度胸で大儲けし、嫌な奉行や悪徳商人をぎゃふんといわせる王道時代劇になるのかと思ってました。

 しかし、中盤からはアナーキーなほうに暴走します。町の人を助けるところで、銀次は町一番の老舗茶屋の若女将、お仙(田野優花)から、どうすれば客が入るかの相談をうけます。銀次はお仙にアイドルばりに握手会とコンサートを提案します。演じる田野はAKB48出身ですから、握手会はお手の物。さらにコンサートシーンになると、ばりばりのアイドルソングをうたい、江戸時代なのにシューズをはいて、さらに、町民たちが親衛隊をつくり「LOVELY お仙!」と時代を超えたコールをします。この時点で序盤のまじめな時代劇はどこかにぶっとんでしまって、僕の笑いのツボに深くつきささりました。このいかにも江戸時代テイストのアイドル楽曲とダンスがたまりません。

 さらに、奉行役の堀部、柏屋役の矢柴もこれさいわいと悪役ぶりを暴走します。一応、蔵之介は父親の悪事に従うか、善玉の主家につくか悩むところもあるのだけど、そういうシリアス場面はぶっとんじゃう、悪役2人のはちゃめちゃな演技も魅力的。極めつけに、藤岡弘、が美味しいところをもっていくのだから、痛快娯楽時代劇としては満足極まりない。

 主演の上村は怪作「許された子どもたち」で柳楽優弥2世といっていいような目力で注目されましたが、本作もお笑い芸人を含めて癖の多い脇役たちに負けないぐらい、ユニークな主役を務めています。そして、黒木、田野といったフレッシュな女優陣、不幸な役があう森永といった若手陣の息の良さに、筧、堀部らベテラン陣の味わいが妙にはまっていました。

posted by 映画好きパパ at 07:10 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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