2023年01月15日

離ればなれになっても

 1980年代に高校生だった仲良し4人組の、その後の30数年間の人生を描いた大河ドラマ。予告編だとカップルの純愛物語にみえますが、そもそも主役(トップクレジット)はカップルではないし、恋愛だけにとどまらず人生そのものに向き合った力作です。

 作品情報 2020年イタリア映画 監督:ガブリエレ・ムッチーノ 出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ミカエラ・ラマッツォッティ、キム・ロッシ・スチュアート 上映時間:135分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2023年劇場鑑賞10本



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 【ストーリー】
 1982年のローマ。高校生のジュリオ(フランシスコ・チェントラーメ)とパオロ(アンドレア・ピットリーノ)は偶然、デモ隊と警官隊の衝突に巻き込まれ、重傷を負ったリッカルド(マテオ・デビューノ)を病院に運ぶ。それをきっかけに親友同士となった3人。一方、パオロは同じクラスのジェンマ(アルマ・ノース)と恋に落ち、4人はいつも一緒にいるようになる。

 だが、ジェンマの母が亡くなり遠いナポリの親戚に引き取られる。遠距離恋愛はうまくいかず自然消滅に。やがて、大学を卒業したジュリオ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)は弁護士、パオロ(キム・ロッシ・スチュアート)は中学の臨時教員、リッカルド(クラウディオ・サンタマリア)は芸能記者になる。そんなある日、パオロは偶然、美しく成長したジェンマ(アルマ・ノース)と再会し…

 【感想】
 恋愛、結婚、仕事での成功といったプラスもあれば、離婚、親子の断絶、友情の裏切り、失業といったシビアな面もある人生。4人はそれぞれ幸運だったり不幸だったり、それぞれの道を歩んでいきます。

 経済的に成功したのはジュリオでした。当初、人権派弁護士だったジュリオですが、大手弁護士事務所に引き抜かれ、悪徳政治家(フランシスコ・アクアローリ)の弁護に成功したことから政治家の娘マルゲリータ(ニコレッタ・ロマノフ)と結婚することになります。外車を乗り回し豪邸に住む豊かな生活。しかし、それは正義を目指していた当初の夢の変節になりました。

 一方、パオロと再開したジェンマですが、正式な教員になれず貧しい生活のパオロに次第に嫌気がさしてきます。パオロの母の介護も重なったこともあいまり、高校時代は永遠に見えた愛情にあっさりとヒビが入ってしまいます。

 こうして4人の人生の浮き沈みがえがかれていきます。裕福でも家族はバラバラだったり、貧乏でもささやかな幸福を得たり。金の切れ目が縁の切れ目になるなど4人の友情は安泰ではありませんでした。それでも、40年近い月日がたち4人も親になることで、若いころに見えなかった景色や、失敗を許す寛容さをえてきます。一方で、将来がキラキラと輝いていた高校時代はもう二度とかえってきません。このあたりは、中高年の観客がみればぐっとくるのでは。

 ジェンマのラブシーンや、パオロと分かれて別の男とくっつくシーンなどに目くじらをたてる感想があって驚いたのですが、彼らと対して世代が変わらないぼくからすると若い時には日本でも普通にありました。草食化が進んだ現代では受け入れがたい感覚なのかな。

 イタリアの現代史に残るできごとをちりばめつつ、まるで4人の人生を身近でみているような感覚になるのは良かった。ピエルフランチェスコ・ファヴィーノやクラウディオ・サンタマリアは日本でも主演作が公開されているので、イタリア映画ファンにはたまらないのでは。でも、国を超えて日本人の中高年にも(もしかすると若者にも)心にささる名作ではないでしょうか。
posted by 映画好きパパ at 06:20 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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