2023年01月25日

エンドロールのつづき

 現代版ニュー・シネマ・パラダイスというふれこみ通り、映画愛はものすごく感じられます。同時に父子の関係もいろいろ考えさせられる習作。見終わった後、もちろんカレーを食べに行きました。

 作品情報 2021年インド映画 監督:パン・ナリン 出演:バヴィン・ラバリ、バヴェーシュ・シュリマリ、ディペン・ラヴァル 上映時間:112分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ  2023年劇場鑑賞20本 



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 【ストーリー】
 インドの農村の小さな駅で、貧しいチャイ売りの父親(ディペン・ラヴァル)を手伝う9歳の少年サマイ(バヴィン・ラバリ)は、一家で映画を見に行った際にすっかり魅力に取りつかれてしまい、学校をサボって映画館にいりびたる。

 しかし、父親はバラモン出身の家系だけが自慢で、映画館のような下賤のところにいくのは許せない。また、入場料も足りなくなり、こっそりもぐりこんでのがばれて映画館を追い出されてしまう。しかし、気のいい中年の映写技師ファザル(バヴェーシュ・シュリマリ)に母親(リチャー・ミーナー)の作った弁当を渡すことで、映写室にもぐりこむことに成功。ファザルと仲良くなり、映画のことをいろいろ教えてもらうのだが…

 【感想】
 パン・ナリン監督が子供時代だったのは1980年代ですが、映画の舞台設定は2010年になっています。それにしても、生活は貧しく家にテレビもない一方、野生のライオンがうろうろしているような田舎ぶりにびっくり。インド映画を何本もみていますが、1990年ぐらいの舞台設定かとおもってました。子供のころにチャイ売りをしていたというのは実体験だそうです。

 映画の冒頭とラストにリュミエール兄弟、キューブリック、黒澤明ら映画の歴史を飾った数々の監督たちの名前が読み上げられるなど映画愛はこの種の映画でも最高といえるほど。しかもサマイのすごいところは、9歳なのにスクリーンに夢中になるだけではなく映像の仕組みに興味を持ち、映画館に置いてあるフィルムの切れ端をつなげて自分たちで上映しようという努力をみせるほど。これはすごすぎました。

 さらに、家系のことで気位は高いけれど財産をだまし取られて貧乏な父親のコンプレックス。息子が映画に夢中としると体罰を加えてやめさせようとします。しかし、自分自身の将来に夢がない一方、息子の映画への夢は膨らむばかり。次第に気持ちも変わっていきます。これって、映画がテーマじゃなくても多くの親子にもあてはまりそう。自分の人生の先が見えた中年と、夢にあふれる子供の対比。親として子供にどのように接していくか、考えさせられました。

 さらに、年齢の差はあるけれど完全に友達関係になったファザルとの映画談義、さぼりまくっているサマイに対しても、将来の夢を持つことが大事であり、そのためには田舎に閉じこもるのでなく広い世界をみてまわるよう教える担任の教師など、貧しいながらも人生の師ともいえる大人たちがいたのはなんと幸せなのかと実感させられます。

 一方で、フィルム泥棒をするなどのやんちゃぶりは、インドの国情もあるのでしょうけど個人的にはあまりおおらかに見られなかったかな。それでも、行動力はたいしたもの。特に、クライマックスの追っかけっこの結果、映画のフィルムがどうなるのか知るシーン、そして、フィルムが終わりデジタルになる時代の変化にどうやってついていくかなど、いろいろ考えさせられる場面は多かったです。

 子役のバヴィン・ラバリは役柄同様、田舎で祖父のお茶売りを手伝っており、オーディションまで映画をみたことがないそう。にもかかわらず、これだけの大作の主役を堂々と演じています。また、劇中でインド映画の名場面が次々と流れているので、インドの映画ファンにはたまらなかったでしょう。僕ももうちょっとインド映画に詳しかったらもっと楽しめたかもしれません。
posted by 映画好きパパ at 06:04 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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