作品情報 2022年日本映画 監督:堀内博志 出演:佐々木ありさ、加藤小夏、小林さやか 上映時間:131分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:横浜シネマリン 2023年劇場鑑賞32本
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村
【ストーリー】
就活中の大学生、慶子(佐々木ありさ)は自分が振った相手が自殺したことを知りショックを受ける。親友の真美(加藤小夏)は恋人で劇団を主催する拓也(平田雄也)を介して、若手劇団員の和夫(水沢林太郎)を慶子に紹介し、新しい恋で心の傷を癒そうと計画する。
だが、慶子は和夫に興味を持たず拓也に異常な執心を示す。一方、日常の闇に潜むように生きる何者でもない青年・宮田(遠藤健慎)は、ある時慶子に出会うのだが…。
【感想】
全3章で構成されています。序盤はとんでもないアクシデントに巻き込まれて若い女性の喪失と再生の物語かと思いました。慶子が振った相手は彼女とほとんど面識がなく、振られて当然。しかも自殺が彼女が振ったことと関係あるか判りません。しかし、大学生で死が身近とはいえない彼女の心を傷つけるのに十分な事件でした。
真美が彼女を心配したのは当然ですが、新しい恋をみつければいいというのは安易な考え。ありがちなラブストーリーになるのかと思いきや、慶子がストーカーのような行動をとっていき、物語は急展開します。それまで、心が傷ついた優しいヒロインという記号的な役割だった慶子が突如として、観客からも理解できないキャラクターに変貌。一方、おせっかいでちょっとうざい真美が、いきなり被害者になるという逆転の構図です。
一種のサイコホラーみたいになって、この先の展開はと思いきや第2章に入ってさらにのけぞります。正直、この展開はまったく予想していませんでした。第3章も思い切った場面の変換はあるのですが、まあ、たまにみる手法です。しかし、第1章から第2章への転換、さらに慶子や拓也たちの行動は意表をつかれてしまいました。
そして、3章も非常にユニークな結末へとつながっていきます。2章でタイトルの意味がなんとなくわかったところへ、3章でタイトル自体も実はフレーズの一つではないかと疑わされます。すなわち、あなたのことは私は知らないけれど、私のことも私はしっているのだろうかということです。そして、私がしらないところで実は想像もつかないことが起きているのではないか。コロナの描写はそれほどないですが(登場人物のマスクシーンはない)、ただ、コロナで人と接触できずに内面を見つめなおす機会が増えただろう現代の若者、もっといえば現代人にとって、人との距離とは何なのかを考えさせられる秀作でした。
佐々木は舞台挨拶と役柄が全然違い、舞台あいさつではふわっとした感じでありつつも映画好きで、ミニシアターにも通い詰めているということで好感がもてます。舞台挨拶には監督と、自殺した大学生の母親役の小林さやかが登場。小林はアニメ「サザエさん」のタイコ役でしられていますが、ご尊顔を拝見したのは初めてで、本作とは別のところで興味深かった。また、舞台挨拶には登場しなかったけど、映画では加藤小夏の存在感はさすがで、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で注目が集まっただけあります。寒い中わざわざ見に行って良かったと思わせる作品でした。
【2023年に見た映画の最新記事】