作品情報 2022年イギリス、アメリカ、アイルランド映画 監督:マーティン・マクドナー 出演:コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン 上映時間:114分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2023年劇場鑑賞37本
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【ストーリー】
1923年、アイルランドの孤島のイニシェリン島。農業をしながら妹のシボーン(ケリー・コンドン)と暮らしている中年男のパードリック(コリン・ファレル)は午後になると親友のコルム(ブレンダン・グリーソン)とパブで酒を飲みながら世間話をするのが日課だった。
ところが、ある日突然コルムから絶縁を言い渡される。身に覚えのないパードリックは必死に弁明するが、コルムは思いもよらない方法に出て…
【感想】
親友でも夫婦でもうざくて我慢していたけど、無理に人間関係を壊すほどではなくなあなあに陥っていることはあると思います。特に孤島で島民のだれもが顔なじみの環境では波風をたてるのは好ましくない。しかし、コルムは自分の人生がこのままでいいのかと気づいた。もう老人になりかけているのに、毎日飲んでバカな世間話をするだけ。それよりは趣味の音楽に打ち込みたい。
そんなコルムの気持ちは分からないのではないのだけど、パードリックを追い払うための方法が奇想天外すぎる。マクドナー監督のオリジナル作品ですがよく思いついたなあ。現実離れしているけれど、単なる地味な映画で終わらず確実に記憶に残るし、エキセントリックなところが賞レースでも評価されたのでしょう。
さらに、シボーンも島の中では珍しい読書家という設定。人生なにも考えないで暮らす人たちは毎日平凡な日常を繰り返すだけということに気づかないのに、音楽や読書といった文化的な暮らしをしていると個がしっかりしてくる。そのことは普通の映画では素晴らしいと描かれているのに、本作では必ずしもいいとは思えないのがなんとも皮肉です。ちょっと知恵遅れっぽい青年ドミニク(バリー・キオガン)の扱いも同様です。
精霊と日本語タイトルになってますけれど、ファンタジー好きにはおなじみの「バンシー」のこと。人の死を予言するアイルランドの精霊で、本作でも死を予言する人物がでてきます。100年前の時代風景といい、土俗的でかつファッションや自然風景の撮影方法も印象的。よくできた映画を見たなあというのが真っ先な感想でした。
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