作品情報 2020年ブラジル映画 監督:イウリ・ジェホバージ 出演:ヘナタ・ジ・レリス、エドゥアルド・メンドンサ、カヤ・ホドリゲス 上映時間:103分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2023年劇場鑑賞43本
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【ストーリー】
ある日突然、ピンク色の雲が世界を覆った。触れると10秒で死んでしまうため人々は屋内に閉じ込められ一歩も外に出ることができなかった。ジョヴァナ(ヘナタ・ジ・レリス)も一夜の遊び相手のつもりだったヤーゴ(エドゥアルド・メンドンサ)と家に閉じ込められてしまう。
やがて、政府はドローンを使って各建物に物資を届けるシステムを開発。人々はいつ終わるかわからない生活を送り始める。ジョヴァナもヤーゴとの子供を妊娠してしまい…
【感想】
ピンクの雲の正体とか原因などは一切不明。劇中の登場人物同様、観客にもわかりません。また、ドローンを使った配給システムなど現実的には穴のある設定ですし、パニックシーンも一切なく登場人物たちは淡々と現状を受け入れます。閉じ込められた人々の心理がどうなるのかという寓話的なものと割り切れば、それほど気になりませんし、2020年の世界はこれに近い心理状態でした。。
ジョヴァナとヤーゴは出会ったばかり。シングルマザーのジョヴァナの子供は友人の家に遊びに行ったまま戻れず、ヤーゴも介護中の父親と離れ離れになります。今までの家族関係を断ち切り、新たな家族として始まる2人。本来、家族というのは愛し合ってできるはずですが、強制的な家族はどうなるのかという心理的な実験がはじまります。
一方で、人死傷を発症したヤーゴの父親や一人ぼっちで取り残されたジョヴァナの友人サラ(カヤ・ホドリゲス)もオンラインを通じて様子をみられるというのは現代的。出産もオンラインで医師の指導を受けながら無事できます。しかし、人と触れ合えない、社会生活を行えないことに耐えきれない人もでてきます。一方で、犯罪がなくなったと歓迎する人もおり、このへんは環境に適応したものが生存するという進化論の世界を地でいっているよう。
終盤、2人の間に生まれたリノ(カヤ・ホドリゲス)は思春期まで育っていますが、生まれたときから外に出られないのが当たり前なので、現状に満足しています。このあたりもコロナのパンデミックが長引けば世代間のギャップが生まれたのかなという思考実験は面白い。幸いにもコロナにはワクチンがあり、社会はだいぶ正常化されつつありますが、ピンククラウドの世界ではワクチンもなく極限状態が続きます。いつかこういう世の中が来るのかと考えるとなかなかぞっとしてしまいます。
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