作品情報 2022年日本映画 監督:山口健人 出演:黒羽麻璃央、穂志もえか、松井玲奈 上映時間:107分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネリーブル池袋 2023年劇場鑑賞46本
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【ストーリー】
他人とのコミュニケーションが苦手な莉奈(穂志もえか)はバイト先の居酒屋で客とトラブルを起こして軽傷を追う。客として居合わせた修一(黒羽麻璃央)が助け舟を出したことから2人は付き合い、同棲を始める。
相変わらず対人関係で失敗ばかりしている莉奈は新しいバイト先のペットショップでもうまくいかない。一方、小さな出版社で働きながら小説家になる夢を見ている修一だが、上司の編集長(山崎潤)や新しく担当する売れっ子評論家の西川(安井順平)のパワハラに振り回されてへとへと。たまたま高校の先輩で大手出版社に勤める今日子(松井玲奈)と会った修一は、彼女の勧めで小説の新人賞応募を決めるのだが、日常にすり減らされてへとへとになり…
【感想】
企画・プロデュースが藤井道人なので、絶対に救いのないエピソードがあるはずだと覚悟してみましたが、人が死んだり難病になったりというような劇的なエピソードはなく、生き方が下手な若い男女が傷つくもがきながら生きていく青春映画です。
刺激的なタイトルですが、西川から修一と莉奈は「仕事もなく夢もない人に生きる価値があるのか」と問われます。そんな人は「生きててごめんなさい」というのが世の中の一般的な見方なのかもしれませんが、僕からすれば修一と莉奈のように互いに思いあえる美男美女のカップルであることだけで十分勝ち組に思えます。しかし、そういう幸せというのは当事者、特に若いうちはなかなか実感できないんですよね。
パワハラを受けた修一の立場は悲惨なものですけれど、ここで莉奈と支えあえれば乗り切れたはず。出版社は一つではないわけですし、コロナのない世界線ですから、若者の就職難も近年は大したことがありません。また、新人賞だっていくつもあるわけです。でも、プレッシャーに押しつぶされていく修一は本当に、そこまで頑張らなくていいのにと応援したくなります。
莉奈もあちこちで失敗ばかり。発達障害の気があるのでしょうか、親にも見放されています。その反動か修一を束縛してしまう。でも、修一がもう少しおおらかだったらここまで傷つけあわなくて住んだのに。修一が些細なことで見栄を張って嘘をついてしまうのは若いころの僕も同様だったので余計に彼のことを応援したくてなりませんでした。
黒羽はこれまでの役柄とは違って陰キャになりきっています。穂志の発達障害君的な演技も合わせて、孤独と不安に囲まれた今の若者のつらさがストレートに伝わってきます。そして、彼のほうが上だと思っていた関係が崩される危うさの描写がエモい。同時に安井のパワハラ文化人は「妖怪シェアハウス」同様で、こうした役柄にぴったり。脇役では編集部の同僚役の冨手麻妙の抜いた感じがうまく、すべてに必死になる修一は大変だけど、彼女のようにちょっとひいて客観的な生き方ができるようになれば
もっと楽なのにと思えてなりませんでした。
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