作品情報 2022年日本映画 監督:松永大司 出演:鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子 上映時間:120分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2023年劇場鑑賞52本
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【ストーリー】
ファッション雑誌の編集者の斉藤浩輔(鈴木亮平)は、パーソナルジムのトレーナの中村龍太(宮沢氷魚)にトレーニングを頼む。母子家庭で母親の妙子(阿川佐和子)が病気がちのため生活を支えている龍太に浩輔は心を動かされ、やがてそれは愛情に変わる。
だが、突然、龍太が別れを切り出した。生活が苦しいため体を売っており、浩輔のことが本当に好きなのに耐えられないと。浩輔は彼の生活を援助することを決めたのだが。
【感想】
浩輔と龍太は本当に愛し合っています。しかし、金銭が絡むことでその関係は純粋なものといえるのか。龍太がひけめを感じたりしないのか。一方で、男女だったら男が働き女が専業主婦とか、逆に売れないバンドマンに尽くして女が経済的に支えるとかいくらでもある話です。ではパパ活というのはどうなのか。一人の愛を独占するために、あるいは生活の苦しさに同情して金銭を与えるというのはそれと変わらないのか。ゲイで男性同士だから経済的な面がでてくることにちょっと違和感を覚えてしまったのか。自分でも頭のなかがぐるぐる回ります。
鈴木亮平がくねくねしたところとエリートビジネスマンの両面をみせて、それぞれはまっているのはすごい。宮沢は「his」もそうですし、中性的なイケメンがあるからこういう役が多いのかもしれませんが、浩輔と龍太の性格の違いが如実に現れたのがおもしろかった。そして、松永監督はがっつりとラブシーンを描きます。「his」はここまでがっつりしていなかっただけに、余計に愛と生活について考えさせられました。
そして中盤、龍太と妙子の家に浩輔が訪問することで事態はまた変化します。龍太はゲイであることをカミングアウトしていないため、妙子の前では二人はいちゃいちゃはしません。しかし微妙な空気に気づくのが母親というもの。龍太のことは妙子も母親として愛しているけれど、それとは違った形の愛情関係がでてきて、この3人の関係は他の作品ではあまり見たことのないような形になっていきます。それは経済的格差はもちろんあるけど、3人それぞれのエゴイズム、打算が発露したといっていいのかもしれません。
それほど長くないシーンをつなぎあわせるとともに、徹底的に外部からの客観的な視点を保つカメラワークで、登場人物たちの内面の動きは観客が判断するしかありません。それこそ、観客によって全然別の解釈がありそうでした。僕自身、終盤の浩輔のある申し出と、それが受け入れられたことにちょっと驚いたのだけど、これも見る人によって評価どころか意味合いも違ってくるでしょう。原作は未読ですが非常に練られています。
阿川は本業はエッセイストですけれど、鈴木、宮沢にひけをとらない演技をみせてくれます。こういう親子って本当にいそうなリアル感がすごい。恋愛だけでなく親子愛とは何かまで踏み込んだ恋愛映画の傑作でした。
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