2023年02月28日

あなたの微笑み

 リム・カーワイ監督と渡辺紘文監督の曲者二人による虚実まじった偏愛ミニシアター映画。今年一番ぶっとんでいて、なおかつ映画愛に満ちた作品でした。渡辺のぶよぶよの裸があれだけ繰り返されると夢に出てきそう。

 作品情報 2022年日本映画 監督:リム・カーワイ 出演:渡辺紘文、平山ひかる、尚玄 上映時間:103分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャック&ベティ  2023年劇場鑑賞63本



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 【ストーリー】
 地元の栃木県大田原市の「大田原愚豚舎」で白黒映画を撮り続け、東京国際映画祭でも評価された映画監督・渡辺紘文(本人)。だが、最近は資金難や企画不足で頭を抱えていた。そこへ沖縄在住のうさんくさい社長(尚玄)がスポンサーになってくれるとの話が舞い込み、さっそく沖縄へ。反社っぽい社長に無理難題を次々といわれてしまう。

 社長に追い払われた渡辺は沖縄から北海道まで各地のミニシアターを回って、自分の過去作を上映してもらうよう頼み込むのだが…

 【感想】
 またもや映画愛シリーズなのですが、他の作品がとんがったように見える「バビロン」も含めて、感動しましょう、さあ泣きましょうとウェルメイドに作ったのに対して、本作はストーリーも虚実まじってるし、ストーリー的にはグダグダで意味が分からないところも多い変な作品ですが、それだけにミニシアターや自主製作映画の偏愛が他の作品よりも痛烈に感じます。

 序盤、東京国際映画祭のプログラミング・ディレクターとして矢田部吉彦が登場し、渡辺とだらだらと映画談義をして、是枝、濱口監督や東宝、東映など実在の映画関係の名前がばんばんでます。また、中盤以降の全国ミニシアター巡りでは沖縄・首里劇場から北海道・浦河の大黒座まで各地のミニシアターの支配人、スタッフらが実名で登場。渡辺の物腰低いながらもいい加減な願いに振り回されていきます。社長は明らかにフィクションなんだけど、こうした実在の登場人物の映画論は台本ではなくて本人の思いを伝えているような気がしました。

 沖縄の社長は唐突なんですが、これを含めて自主映画の環境というのがどういうもので、どういう人種がかかわってきているのかわかります。また、コロナ禍で苦しむミニシアターの現状も支配人自ら語っているエンディングロールのドキュメンタリーっぽい映像は映画ファンなら釘付けになるでしょう。ラストシーン含めて、わかったようなわからないような話も多い。でもエンドロール後に、ここに登場したミニシアターのいくつかはもうつぶれてしまったという報告があり、本当にコロナが与えた影響が大きかったことが分かります。

 渡辺は「天才です」という黒Tシャツを着て、「世界のワタナベ」と自称していますが、ミニシアター関係者にすら知られていないギャップは哀愁漂う喜劇としてすばらしい設定。さらに、首里劇場の老支配人をはじめ、実在のミニシアター関係者も味のある人物が多くて楽しめます。極めつけはマドンナ役の平山ひかるが、渡辺が各地で出会う魅力的な女性を一人でこなしていること。この幻影っぽい作り方もぐっときます。彼女のなんとも言えない透明な存在感が本作にぴったりで、虚勢を張っていた渡辺が彼女に抱きしめられて涙ぐむシーンは、こちらまでもらい泣きしそうになりました。

 僕自身、地元のミニシアターであるシネマジャック&ベティや横浜シネマリンはちょくちょくいきますし、あの薄暗い背徳感はシネコン、ましては配信では決して味わえないから大好きな環境です。渡辺作品はオムニバスの「蒲田前奏曲」で見ただけですが、蒲田を舞台にしたオムニバスなのになんも関係ない大田原の話が白黒で移っていてびっくりしました。その時は意味不明でしたが、本作をみてなんとなく納得した気がします。

 あと札幌のミニシアターといったらシアターキノだと思うのですが、サツゲキが登場したのは、札幌を代表する映画館だっけど、のちに破綻したスガイシネプレックスの系譜だからなんでしょうかね。僕は15年ぐらい前に札幌に住んでいましたけど、スガイが無くなったというのは衝撃で、サツゲキがきれいな建物のミニシアターになっている姿が本作でみられて、ほっとしました。

 リム・カーワイ監督の前作「COME & GO カム・アンド・ゴー」は国際都市大阪を舞台に、外国人問題から目を背けている日本人を風刺する社会派映画でした。本作はテイストがあまりにも違ってびっくりしたのですが、よく考えるとミニシアターの苦境ひいては映画業界の衰退から目を背けている僕も含めた日本の映画ファンに、ユーモアでくるみつつも突きつけた問題作といえるかもしれません。
posted by 映画好きパパ at 05:46 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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