2023年04月27日

世界の終わりから

  独特の映像美と厩二病的世界観で話題の紀里谷和明監督の最新作にして、本人は最後の作品にするそう。かつてのセカイ系を想起させましたが、伊東蒼の好演もあってすんなり観られるファンタジーになってました。

 作品情報 2022年日本映画 監督:紀里谷和明 出演:伊東蒼、毎熊克哉、夏木マリ 上映時間:135分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座  2023年劇場鑑賞132本 



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【ストーリー】
 幼いころ両親を亡くし、介護していた祖母も亡くなったため天涯孤独になった女子高生のハナ(伊東蒼)。生活費も自分で稼がなければならず、学校ではいじめにあって行き場がなかった。ある晩、戦国時代で侍たちが殺しあっている夢をみる。

 翌日、警察庁警備局の江崎(毎熊克哉)と佐伯(朝比奈彩)がハナの前に現れ、夢を見なかったかと質問する。見ていないと答えたハナは、その晩、再び夢の続きを見る。侍たちに矢でうたれたハナは少女ユキ(田光桜)に助けられ、連れられた洞窟で老婆(夏木マリ)に会う。老婆はハナにほこらまで手紙を届けるよう依頼したあと、追ってきた侍に殺される。目覚めたハナは江崎たちに強引に連れられて、一人の老婆(夏木マリ)に会わせられる。夢の中と同じ人物に驚くハナへ、老婆は世界の滅亡まであとわずかで、それを救えるのはハナだけだと告げる…

 【感想】
 平凡なヒロインの行動が世界を救うというセカイ系の作品。切っても切れない庵野秀明監督のシン・仮面ライダーでも似たようなセカイの救済、破滅というテーマになっていましたが、本作のほうがよりスムーズに観られます。人類は嫌なやつや問題行動もたくさん起こすけれど、わずかでも救いがあるなら生きてみようというもの。

 ハナは高校生なのに早くも絶望的な人生がまっています。その彼女が世界を救う役割となり、人間のいいところ、嫌なところをたくさんみて決断しなければなりません。多元世界という意味では「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」とも似たことがありますが、本作のほうがずっとウェルメイドに切なく作っており、ギャグやとんがった部分はありません。

 戦国時代の殺し合いや現代のいじめなど、人間の嫌な部分がたくさんみられる一方、ハナのただ一人の親友で足の悪いタケル(若林時英)の存在が、ハナの世界を何とかつなぎとめてくれます。このあたりもセカイ系の王道の話。カセットテープというアナログな道具がキーアイテムになっているのも、懐かしさを感じさせます。

 このハナの絶望的な状況とそれでも救わなければと必死になる様子に胸を打たれるひともいるでしょう。伊東はNHKの大河ドラマ「どうする家康」でも必死になって走り、自己犠牲を遂げる役で話題になったばかり。映画でも走るシーンがあり、非常にさまになっていました。彼女の存在感がなければ本作はありえなかったでしょう。江崎や佐伯との疑似家族的な関係も、不幸な役が多い伊東にはぴったり。紀里谷監督はまだ50代なのに、引退はもったいないなあ。
posted by 映画好きパパ at 06:03 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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