作品情報 2021年オーストリア、フランス、台湾、ベルギー映画 監督:C・B・イー 出演:クー・チェンドン、クロエ・マーヤン、J・C・リン 上映時間:120分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2023年劇場鑑賞144本
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【ストーリー】
美青年のフェイ(クー・チェンドン)は田舎の病気の家族を支えるため、都会で体を売って生活する男娼。ある日客から暴行を受け、同棲中のシャオレイ(J・C・リン)が仕返しに行くものの逆に大けがを負い、フェイは彼を捨てて逃げてしまう。
5年後、別の町で引き続き男娼を続けて金を得たフェイは久しぶりに故郷に帰るが、同性愛者に家族や近所の目は冷たい。だが、都会へ戻ったフェイのもとへ、後輩のロン(ユーファン・ベイ)が自分も都会で成功したいとやってくるのだが…
【感想】
シーンとシーンの間が空白で突然飛び、説明もほとんどないなどヨーロッパ映画的だなとおもったが、イー監督はなんとミヒャエル・ハネケの弟子だそう。同じようにシーンの間の説明がない「サイド バイ サイド」と比べると、両作とも新人監督なのに登場人物の心情や社会構造の歪みをきちんと取り入れているのがさすがです。
台湾映画だから台湾が舞台だと思いきや「山東に帰省する」というセリフがあり、中国でも同性愛の男娼がこんなにいるのかというのもちょっと驚き。田舎の親戚から30歳にもなって結婚しないのは変態だとののしられるなど、家父長制の古い文化が残っているのもへえーという感じでした。
自分を助けようとした彼氏を置き去りにして、自分だけ羽振りの良くなったフェイは心の中に穴が空いているよう。そんな彼の空疎な金持ちぶりと陰鬱な内面が良い対比になっています。また、ゲイの偽装結婚相手として出てくる女性ルー・ルー(クロエ・マーヤン)の結婚式での醒め切った表情など、中国や台湾映画というよりも、鬱のフランス映画っぽい印象が強まりました。
男性のラブシーンはそれほど過激ではないとはいえ、男娼なので盛り上げようとクラシックを流す中でのシーンが複数あるのも印象的。ただ、やはり説明がないと見ていて疲れる部分はあります。また、単純なストーリーではなく人の生きていくうえで失ったものと得たものの重みといったテーマをしっかりこめているのもやはり見終わった後ちょっと疲れました。フランス映画好きの人には会っているのではないでしょうか。
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