作品情報 2021年モンゴル映画 監督:センゲドルジ・ジャンチブドルジ 出演:バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル、エンフトール・オィドブジャムツ、ドゥルグーン・バヤスガラン 上映時間:123分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2023年劇場鑑賞153本
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【ストーリー】
都会の大学で原子力を学ぶ地味な女子大生サロール(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル)は、ケガをした友人に頼まれバイトの代行に入る。そこはアダルトグッズのショップだった。最初はとまどったが、多様な趣味をもつ客たちに次第に慣れていく。
オーナーのカティア(エンフトール・オィドブジャムツ)は普段、店に顔を見せずに高級フラットに一人で暮らしている謎多き女性。癖の強いカティアに気に入られたサロールはあちこち連れまわされる。だが、客とのトラブルが起きてしまい…
【感想】
冒頭、まさか今時そんなオチはないよなと思わせつつ、見事に笑わせてくれる場面からスタート。監督の軽妙なノリが全編に続きます。主題歌を手掛けるモンゴルの人気歌手ドゥルグーン・バヤスガランが、サロールと同じバスに乗っていると思いきやいきなり唄いだしてスポットライトを浴びたりといった、メタな演出も盛り込まれているのが心地よい。
サロールは両親のいうことを知る大人しい女の子で、真面目過ぎるところがかえって天然っぽく、アダルトグッズの恥ずかしさと中和されます。それどころか、売春婦に商品を配達にいったところ間違えて逮捕されたり、商品を試したのかと客に言われて、ポスターにあるように一人でバニーガール姿でラブホテルに入ったりと、本人が生真面目なだけになんともおかしい。
一方、カティアは60歳ぐらいで、青春時代はまだ門がるが貧しい共産主義国だったころ。ロシア語がペラペラな一方、ピンクフロイドのレコードを人生の宝物として保存してあるのが、育ってきた背景を浮き彫りにします。そんな彼女が、サロールを次第に垢抜けさせ、両親のいうことを聞くだけでなく、自分の本当の夢は何かを気づかせていくというストーリーは、みていて心地が良かった。若い人が成長していく姿は本当に楽しい。
モンゴルでも女子大生は親から価値観を押し付けられ生きづらいのかというのは、発見でしたが、モンゴル映画でもヌードシーンがあるのかというのも発見でした、性欲もふくめて、自分の気持ちに正直になる大切さをしみじみ分からせてくれます。バヤルツェツェグ・バヤルジャルガルは本作が映画初出演だそうですけど、堂々たる主役。エンフトール・オィドブジャムツは日本の名脇役の池谷のぶえを彷彿とさせ、やはりモンゴロイドは似ているなというのも感心しきりでした。
余談ですが、考現学という邦題にちょっとびっくり。僕が学生だった30年ほど前に習いましたが、最近ではすっかり聞かなくなっていたので、まだ死語ではなかったのですね。
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