2023年05月21日

ハマのドン

 2020年、横浜市長選でカジノが争点となり、横浜市選出の菅首相(当時)が推す候補がIR反対派の候補に敗れ、菅首相辞任の一因になりました。反対派の中心人物でハマのドンと呼ばれる藤木幸夫氏に密着したドキュメンタリー。勧善懲悪っぽくスカッとしますが、どうも現実はそう簡単ではないようです。
 
 作品情報 2023年日本映画ドキュメンタリー 監督:松原文枝 上映時間:100分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ  2023年劇場鑑賞162本



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 【ストーリー、感想】
 カジノ経営も手掛けていたトランプ大統領(当時)からの圧力もあり、日本政府は国内でカジノの新設を決めた。その有力な候補地が横浜市だった。菅官房長官が首相になり、経済効果を期待する政財界が横浜推進を進める一方、地元市民を無視したトップダウンの進め方やギャンブル依存症の懸念もあり、ハマのドンと呼ばれた藤木幸・横浜港運協会会長は「命がけで反対する」と表明する。

 決戦となった市長選はカジノ推進を進めてきた現職の林市長、菅首相の側近で閣僚を辞任してまで立候補した小此木八郎氏、立憲民主党などが擁立した山中竹春横浜市立大教授らの戦いとなった。菅首相をはじめ自民党は総力で小此木氏を推したが、山中氏が圧勝しました。

 映画は国や横浜市が横暴にカジノを推進していったことが描かれます。反対派の署名は無視し、反対業者には圧力をかけます。これに対して当時90歳だった藤木氏は、今までは麻生太郎氏ら自民党幹部と仲良しだったにもかかわらず、署名活動した市民らと連携。お上の圧力をはねのけようとします。この辺りは見ていると菅首相、林市長の対応が本当にひどく、悪代官に立ち向かい貧しい庶民を助ける水戸黄門のドラマをみているよう。

 そもそも、アメリカではカジノ需要が飽和。一方で膨大な家計金融資産が眠り、資産層の人数も世界2位の日本は国際的なカジノ業者にとっておいしい限り。なんとカジノの利益は外国人は無税なのに、日本人はきっちり税金をとるという日本が国際業者の属国のような不平等な進め方をしています。

 特に菅首相は若いころは藤木氏の庇護で国会議員になったのに、偉くなったらあっさり切り捨てる冷たい人物と描かれています。藤木氏は「私と菅の喧嘩」、「主権在官邸でなく、主権在民であることがわかった」とキャッチーなフレーズを次々と並べます。実際、山中氏が市長になったとたん、カジノの経済効果試算は4分の1にさがり、官僚がいかにいいかげんな数字で仕事を強行しようとしたかよくわかりました。そもそも、

 さらに藤木氏が戦争中、空襲にあって友人や恩師を目の前で失い、遺体を片づけたこと、貧しい港湾労働者の発展のために文字通り命がけで働いてきたことが紹介されます。考案労働者というと暴力団との関係が想起されますが、父親は山口組の組長と仲良しだったけど、自分はすっぱり縁を切ったとはっきりいいきり、少年野球や地域の清掃活動など日頃から地元のために尽くしていることが明らかにされています。テレビ朝日のドキュメンタリーがもとになっていますが、本当にウェルメイドで見やすいドキュメンタリー。

 一方で、藤木氏べったりの見方はジャーナリズムとしてどうなのか。もちろん国のトップである首相の強引なやり方を市民とともにストップできたこと自体は、たとえ自分の損得があるにしても、日本にまだ民主主義が残っているともいえ評価しています。カジノは大阪にできることが決まりました。果たして横浜がカジノを拒否したことは正解か間違いだったのか、10年後ぐらいにはっきりするのかもしれません。
posted by 映画好きパパ at 07:11 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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