2023年05月22日

フリークスアウト

 第二次大戦版ファンタスティックフォーと劇中でもいわれていますが、単なるアクションでなく戦争の愚かさ、異形のものへの愛といったデル・トロ作品を彷彿とさせるダークファンタジーです。

 作品情報 2021年イタリア、ベルギー映画 監督:ガブリエーレ・マイネッティ 出演:クラウディオ・サンタマリア、アウロラ・ジョヴィナッツォ、ピエトロ・カステリット 上映時間:141分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ  2023年劇場鑑賞163本



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 【ストーリー】
 第2次大戦中のイタリア。体から高圧の電気を発する少女マティルデ(アウロラ・ジョヴィナッツォ)、昆虫を自由に操れる青年チェンチオ(ピエトロ・カステリット)、狼男のフルヴィオ(クラウディオ・サンタマリア)、体が磁石になっている小柄なおっさんマリオ(ジャンカルロ・マルティーニ)の4人は、老奇術師のイスラエル(ジョルジョ・ティラバッシ)率いるサーカス団で、各地を巡業しながらひっそりと暮らしていた。

 しかし、ユダヤ人のイスラエルに危険が迫り行方不明になる。残った4人のうち男性3人は羽振りの良いベルリンサーカスに入ろうとする。団長のフランツ(フランツ・ロゴフスキ)は夢で未来を予知することができ、ナチスの敗北を防ぐために4人の超能力者を探していた。一方、ナチスに襲われたマティルデをパルチザンが助け…

 【感想】
 2時間半近いのにあっという間に過ぎてしまいました。冒頭、田舎の町で巡業する5人。数々の超能力で観客は子供から老人まで魔法をみるように見入ります。しかし、そこへ突然空襲が。子供だろうが大人だろうが見境なしに死んでいき、予告編でみたようなB級SFでないことが分かります。

 異能がゆえに虐待されていた4人をイスラエルが救ってサーカスを作った過去が回想されます。しかし、イスラエルが行方不明になっても男性3人は自分たちの食べることを優先。あろうことかナチスのサーカスに協力しようとします。これも普通の映画だったらナチスは徹底的に悪として描かれ、本作でもユダヤ人やフリークスたちを虐殺しているのですが、主人公側が自らナチスに協力しようというのは珍しい。実際に占領地ではほとんどの住民が協力したわけですから、そういう史実を浮彫にしているのでしょう。

 このナチスのサーカス団長フランツは、指が6本ある異形の姿。エリート軍人の家系に生まれながら虐待されていました。そのコンプレックスが、超能力者を集めた軍団で戦況を逆転しようという執念にかられます。彼の愚かで哀れな様子をみていると、許されないことをしたとはいえ彼もまた戦争がなければ平和に暮らせたのにと思えてなりません。

 こういう異形のキャラクターたちへの偏愛はマイネッティ監督の前作「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」からさらに踏み込んだもの。パルチザンたちも戦争の傷病兵が主力で、片足だったり片目だったりしています。ちなみに、1970年代の日本のロボットアニメ「鋼鉄ジーグ」はイタリアで大ヒットしており、マイネッティ監督はエンディングロールに流れるフランツが予知した未来のなかにもジーグが出ており、日本のアニメファンとしてはうれしいところ。

 さて、敵味方に分かれた異能者たちですが、男性3人はフランツが能力を確かめるために拷問を受け、ナチスが悪者だということに気づきます。そしてクライマックスの大アクションへとなるのですが、ここでも戦争の愚かさを嫌というほど見せられます。フランツは悪役でも哀しい悪役として描いてきたことが活かされました。

 残酷なシーンだけでなく、拷問の最中はマリオがすっぽんぽんになってしまうなど、ブラックユーモアも盛り込まれ、緩急をつけて最後まで楽しめます。クラウディオ・サンタマリアは「ジーグ」に続いての主演。全身毛むくじゃらで粗暴ですが、ヒーローらしい見せ場もあります。また、一見可憐で過酷な過去から戦いを嫌うマティルデ役のアウロラ・ジョヴィナッツォは存在感があり、今後が楽しみな女優です。

posted by 映画好きパパ at 06:08 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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