作品情報 2022年アメリカ映画 監督:ベス・デ・アラウージョ 出演:ステファニー・エステス、オリヴィア・ルッカルディ、デイナ・ミリキャン 上映時間92分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2023年劇場鑑賞174本
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【ストーリー】
田舎町で幼稚園の教師をしているエミリー(ステファニー・エステス)は、優秀な白人が有色人種に逆差別をしていると考え、同じ考えを持つ女性たちと「アーリア人団結をめざす娘たち」をいう会を結成することにした。
初回の会合の後、メンバーのキム(デイナ・ミリキャン)が経営するドラッグストアで客のアジア系の姉妹アン(メリッサ・パウロ)とリリー(シシー・リー)と口論になり、エミリーは仕返しを思いつくが…
【感想】
コロナ禍のアメリカではアジア系の人が襲われ、従来の黒人への襲撃からさらに有色人種へのヘイトクライムが多くなったニュースが伝えられます。ただ、日本にいるとそうした実感はわきません。アメリカにいる有色人種が本作をみたらものすごい恐怖、嫌悪を感じるでしょうけど、そこまで僕の想像力はおいつきませんでした。
冒頭、会合に参加する女性たちは教師や主婦、商店のおばさんと普通の人ばかり。有色人種へのいらだちも、自分が出世できなかったとか、妊娠しなかったとか自分の不運を有色人種のせいにばかりしています。パイにカギ十字のマークを書いていたけど本人も本気でナチスを支持しているわけでなく、冗談めいた気持ちもあったのでしょう。
しかし、店でトラブルにあってから物事はどんどん悪いほうにいきます。集団のなかでは穏健派よりも過激な意見に引っ張られ、とめようとすると弱虫扱いされてしまう。また、参加者のなかに刑務所上がりの女性レスリー(オリヴィア・ルッカルディ)がいたことで、暴力的な色彩も強めていきます。レスリーも最初は自分が刑務所上がりの底辺でおどおどしていたのに、狂気の中ではインテリで口ばかりのエミリーを押しのけてリーダー的になっていました。このへんも集団の恐ろしさをまじまじと感じさせます。
話の流れは途中で想像つくけれど、手持ちカメラでワンカットでやる(実際にはカットを割っているという説もあるけど)というのは非常に意欲的。作品の出来よりも臨場感を重視しており、何テイクぐらい撮影したのか興味深いところです。監督のベス・デ・アラウージョは中国系とブラジル系の両親をもち、アジア系女性が殺害されるヘイトクライムに怒りを覚えて制作したそう。これが初監督ですが非常に意欲的な作品になっています。またノースターで、見知った顔の俳優がいないことも、余計、普通の人が簡単に狂っていくさまをあらわしているようでした。
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