2023年06月07日

雄獅少年/ライオン少年

 中国の獅子舞は格闘技だったという超絶興奮アクションスポコンアニメ。中国アニメの水準の高さに感動します。観客が少ないのがもったいない。テンション上げたければ今すぐ映画館へどうぞ。

 作品情報 2021年中国映画アニメ(吹き替え版) 監督:ソン・ハイポン 声の出演:花江夏樹、桜田ひより、山寺宏一 上映時間107分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎  2023年劇場鑑賞181本



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 【ストーリー】
 2006年、中国広東省の農村に住む18歳の少年チュン(声・花江夏樹)の家は貧乏で、両親は都会に出稼ぎにいったまま帰ってこなかった。ひ弱で弱虫とバカにされるチェンは獅子舞を観に行った先で、地元の獅子舞グループにいじめられるが、謎の獅子舞が助けてくれる。その獅子舞は少女チュン(桜田ひより)だった。同い年で同じ名前ということで意気投合した2人。少女は前年の中国獅子舞大会の優勝チーム。今年の大会に出場するよう誘う。

 獅子舞は2人の踊りてと太鼓担当の3人いなければならない。チュンは山猿とバカにされているマオ(山口勝平)とデブでバカにされているワン公(落合福嗣)をなんとか仲間にいれるが、素人の彼らは何をしていいかわからない。やがて、獅子舞の達人チアン(山寺宏一)が近くに住んでいると聞いた3人は、弟子入りしようと押しかけるのだが…

 【感想】
 15年ほど前を舞台設定にしたことがきいており、獅子舞という格闘スポーツのアクションだけでなく、貧富の差の拡大といった社会問題も背景にしっかり描かれています。3人の貧乏で容姿もふるわない負け組が、獅子舞に打ち込むことで一発逆転というのはまさにチャイニーズドリームでした。

 なにしろワン公は太鼓を買うお金がなく、腹太鼓で練習しているほど。一方、チアンも若いころは獅子舞の伝説の名手だったのですが、獅子舞では生活できないと今はしがない魚屋。妻のアジュン(甲斐田裕子)にこき使われている毎日です。師匠も弟子も人生どん底の負け組。しかし、必死で練習する3人の姿にチアンもアジュンも心をうたれ、若かったころの獅子舞への情熱をもう一度取り戻します。このあたり、少年の成長譚だけでなく現実に負けた中年が若者を見て自らも発奮するという流れが心を打つ。

 通常のスポコンものの流れと思っていたら後半、思いもよらない出来事が起きます。チュンの父が出稼ぎ先で大けがをして、一家を支えるためにチュンは仲間と別れて一人出稼ぎにいかなければならないのです。それまで、スポコン映画にありがちなモンタージュ技法を使った練習シーンは笑いながらもテンポよくみえました。しかし、この場面では都会の工事現場などでこき使われて、ぼろぼろになる姿がモンタージュで流れるのです。同じ手法をとっているのに、見ているこちらへのダメージは天と地の差があります。ここまでシビアな現実を組み込むというのはうまいストーリーテリング。

 緩急の付け方も中国映画ならではの泥臭いうまさ。ワン公の腹太鼓もそうですし、美人の写真をみるだけで鼻血を出して倒れるマオ、そしてアジュンの目を盗んでコミカルにトレーニングをつけていくチアンなどギャグも満載。それだけに、感動的な部分の効果がよくでるのです。

 そして何より驚くべきアクションでみせる獅子舞のシーン。実際の中国の獅子舞がどうかわかりませんけれど、リアルとやりすぎのすれすれで、華麗なジャンプや激しいキックなど格闘ものとしても、美しい舞としても堪能できます。さらに太鼓の拍子が見ているこちらのテンションもどんどん上げていきます。クライマックスはスタンディングオベーションしたくなるほどの、予想外の見事な展開にしていました。

 アニメの技法もお見事。冒頭の中国山水画のような獅子舞の歴史から一転、CGアニメで現代の中国をきっちり映し出すアニメ技術も心憎い。キャラデザも変に美化せず、負け組ということもあってコミカルに地味に描かれているのも、アニメにしては珍しいでしょう。日本語吹き替えも実力派声優をそろえていますし、女優枠の桜田ひよりもきっちりその中に溶け込んでいました。

posted by 映画好きパパ at 06:04 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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