作品情報 2023年フランス映画アニメ 監督:アマンディーヌ・フルドン、バンジャマン・マスブル 声の出演:アラン・シャバ、ロラン・ラフィット、シモン・ファリュ 上映時間86分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2023年劇場鑑賞201本
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【ストーリー】
1959年、イラストレーターのジャン=ジャック・サンペ(声・ロラン・ラフィット)は、お気に入りの子供のキャラクターを使えないかと、友人の作家、ルネ・ゴシニ(アラン・シャバ)に相談。「プチ・二コラ」を共同で産み出す。
優しいけどしっかりものの両親に育てられた二コラ(シモン・ファリュ)は元気いっぱいで素直な男の子。学校のクラスメイトたちや隣の家の少女と、毎日を楽しく暮らしている。そんな内容の児童書はロングセラーに。仕事中のサンペのもとに二コラが現れ、いろいろ話しかけてくる。
【感想】
サンペとゴシ二の執筆にいたるエピソード、プチ・二コラの物語の紹介、そしてサンペの前に物語世界から飛び出した二コラと3つの階層の話があります。僕はこの映画をみるまでプチ・二コラを知らなかったのですが、やんちゃで元気いっぱいの二コラたちの、毎日終わらないような生活をみていると、自分の子供時代を想起しました。キャラクターデザインも動きも往年のアニメーションをみているようで、ノスタルジーをかきたてられます。
サンペ自身は不幸な子供時代を送ったことから、二コラには明るく楽しい生活を送ってほしかったそう。2人の会話は作者とその造形物、年齢の差などを飛び越えて、気の置けない大切な友人と話しているようで見ていて心地がよい。そして、純真な子供の疑問が、生活に疲れたサンペの心に届くというスタイルも、同じく疲れた中年の僕からしてはうれしかった。二コラたちの平和で笑えて過ごせる世の中が、世界中であたりまえになればいいとも実感しました。
子供たちの生活はスマホもテレビゲームもない時代のもの。すぐに取っ組み合いの喧嘩を始めると、喧嘩の周りが煙に包まれるような演出は日本と同じで笑いました。もっとも、最近のアニメではこういうシーンはないでしょうけど。また、隣の女の子をバカにしていた二コラがぎゃふんという目にあわされるなど、さすがは平等の国、フランスの映画といった感じ。一方で、第二次大戦が終わって10数年しかたっておらず、ナチスのつけた傷跡がアニメにも反映される場面もあります。単に楽しいだけでなく、かわいいキャラクターが登場しているのに悲惨な話や人生の辛みなどが盛り込まれているのも、フランス映画の大人の味わい。
脚本のアンヌ・ゴシ二はルネの娘。51歳の若さで亡くなった父への思いも反映されているでしょう。また、サンペは2022年、本作が完成してカンヌで話題になったのを見届けて亡くなりました。アニメのキャラクターは永遠に残るのに、実際の2人が亡くなっているのは不思議な気持ちもします。演出もこっており、モノクロで色がついていなかったキャラクターが舞台に登場するようにスピーディーにどんどん色がついていくとこはアニメの長所をうまくいかしてました。字幕版をみたのだけど、吹き替え版も芸達者な声優を集めており、こちらも機会があればみたいな。
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