作品情報 2022年フランス映画 監督:クロード・ジディ・ジュニオール 出演:MB14、ミシェル・ラロック、ギヨーム・デュエム 上映時間101分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2023年劇場鑑賞202本
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【ストーリー】
移民の青年アントワーヌ(MB14)は寿司屋のデリバリバイトをしながら、兄で地下格闘技の選手のディディエ(ギヨーム・デュエム)のマネージャーをして生計を立てている。ディディエはアントワーヌに会計士の資格をとって、寿司屋の正社員というまっとうな職業につくことを望んでいたが、本人はラッパーが夢だった。
ある日、オペラ座のスクールに出前を届けたアントワーヌは、金持ちの学生マキシム(ルイ・ドゥ・ラヴィニエール)からバカにされ、お返しにオペラっぽい美声を披露する。オペラ教師のマリー(ミシェル・ラロック)はその声にほれ込み、授業を受けにくるよう勧めるのだが…
【感想】
オペラというと鑑賞するのにもカネがかかるし、レッスンにも莫大な料金がかかります。貧しい移民の青年にとって別世界。マキシムやスクールで仲良くなる女子学生ジョゼフィーヌ(マリー・オペール)ら金持ちのお坊ちゃん、お嬢ちゃんしか生徒にはなれません。一方、アントワーヌは着ているものもみすぼらしいし、幼馴染の女性サミア(マエヴァ・エル・アルーシ)らと地面に座り込んでだべったり、喧嘩したりと貧民そのもの。
しかし、マリー自身も若いころ貧しくDVを受けた身でしたし、映画でも触れられてますがパヴァロッティも師範学校出身で元教師だったわけですから、アントワーヌがオペラ歌手になるというのもまったく不可能ではない、フレンチドリームを体現できればというわけです。
ただ、単純な成功物語といえないのが、ディディエたちの世界とオペラの世界が完全に分裂していること。オペラの勉強をするならば、会計の勉強をして寿司屋の正社員になる道はつぶれます。また、ディディエたちは他地区の移民たちと勢力争いをしていますが、今は暴力よりもラップバトルが中心となっており、美声のアントワーヌがいなければ負けてしまいます。一方、マキシムやジョゼフィーヌと話していると格差を突きつけられ、ジョゼフィーヌの家にいけば貧乏をバカにされます。自分の出身階層である兄や仲間をある意味裏切ってオペラの勉強をすることへの葛藤がでてきます。
冒頭、夜道でラップの歌詞を考えているアントワーヌに白人警官たちが職質、嫌がらせをします。また、サミアは荒れ果てた移民たちの団地から脱出するために軍隊を志願します。がこういった差別、格差がある現代社会を映し出しつつも、フレンチドリームが体現できるのか。最後まで楽しめました。
MB14は本職のラッパー。オペラを唄う場面も含めて歌唱力は抜群です。また、フランスを代表するオペラ歌手ロベルト・アラーニャが本人役で出演。美味しいところをもっていきました。オペラとラップという違うジャンルですが、歌唱シーンもたっぷりあってウェルメイドな音楽映画になっています。
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