作品情報 2021年チリ、フランス、ドイツ、アルゼンチン、コロンビア 映画 監督:マティアス・ロハス・バレンシア 出演:サルバドール・インスンサ、ハンス・ジシュラー、アマリア・カッサイ 上映時間99分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2023年劇場鑑賞203本
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【ストーリー】
1989年、チリの農村に住む12歳の少年パブロ(サルバドール・インスンザ)は美しい歌声を評価した村の司祭(ルイス・デュポ)に勧められ、奨学生としてコロニア・ディグニダにやってきた。
パブロは知らなかったが、自給自足に見えるコロニアはナチス残党で少年愛主義のパウル(ハンス・ジシェラー)が、独裁政権と結びついて拷問、虐殺などを行っていた場所だった。パブロは同室の少年ルドルフ(ノア・ウェスタマイヤー)と仲良くなるが、彼はパウルに性的虐待を受けていたのだ。
【感想】
コロニアを見たからここがとんでもない場所だという基礎知識はあったけれど、それでも分かりにくいシーンが多かった。特に子供たちだけでは尺が足りないと考えたのか、保母のギゼラ(アマリア・カッシャ)とヨハネス(デビット・ゲイテ)の関係を盛り込んでいるのだけど、それが何の意味か鑑賞中はよく判りませんでした。結局、コロニーの大人の性知識が歪んでいる象徴なんだけど、女性陣がみんな金髪の白人ということもあって、他の登場人物と見分けるのが大変。
コロニアが異常地帯というのが前提になっているので、説明調の場面は少ない。また、南米の映画事情がどうなっているのかわからないけれど、小児性愛の場面も露骨な部分は一切なく、ひどさが伝わらないというところもありました。だから、なんとなく異常感は受け取っても、どんなところなのか事前の知識があったほうがいいです。
興味深かったのが、ルドルフはパウルの性的虐待を受ける代わりに、唯一、テレビを観ることが許されていたこと。周囲はルドルフをうらやましがるけれど、ルドルフにとってテレビは嫌悪の対象でしかありません。権力をもった大人の嫌らしさが象徴されるような場面でした。
洗脳されたカルトの恐怖を描くのに、あまりショッキングな描写は使いたくなかったのでしょうけど全体的にテンポが遅い。さらに、少年視点が中心のため政治的な動きなどもわからず、コロニアとはいったい何なのかというのは判りません。ただ、ピノチェト政権崩壊後も、パウルが2010年まで罰せられずに暮らしていたというのは衝撃でした。BGMのサラバンドの多用は好みのわかれるところでしょうか。
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