2023年06月27日

この日々が凪いだら

等身大の若者たちの将来、夢、仕事、家族、恋人などの悩みを取り上げた群像劇。非常に心に染み入る良い作品なんですけど、モスクワ映画祭の主演女優賞受賞のニュースも含めて、いろいろ考えてしまいました。

作品情報 2022年日本映画 監督:常間地裕 出演:サトウヒロキ、瀬戸かほ、山田将 上映時間109分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ  2023年劇場鑑賞207本



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 【ストーリー】
 大学卒業後、建築作業現場で働いている宮嶋大翔(サトウヒロキ)は恋人の望月双葉(瀬戸かほ)と同棲している。双葉は花屋で働いており、仕事は好きだったが給料が安いことが悩みの種だった。

 大翔の職場で働いていた老人ハルさん(五島岳夫)がリストラされる。若い同僚たちは使えない老人だからとバカにするが、自分の将来をみるようで大翔の心は重かった。一方、大翔の幼馴染で広告会社で働く斎藤大吾(山田将)は職場でミスばかりしていて…

 【感想】
 一種の群像劇でだれにでも起きそうな日常を丁寧に紡ぎだしています。彼ら彼女らに漂う閉塞感やあきらめムード、特にまだ20代なのに老後貧乏をあれほど恐れて、お金のことに汲々としているのに驚きました。実際に今の若い世代は20代なのに年金のことを考えている人も結構いて、非常にリアルになんですが、おじさんからするともっと人生を楽しんでほしいし、また若者にそう思い込ませてしまっている大人の責任も痛感させられます。 

 登場人物たちは些細なことで気持ちがすれ違ったり、細かいことにくよくよ悔いたりします。それがいかにも若者らしい内省ぶり。本当にもうちょっと気楽に考えるだけで変わるのでしょうにと何度も思いました。そして、悪人がだれも登場しないのに、みんな疲弊してすりきれていくのがなんとも哀しい。あまり知名度のある俳優はいませんでしたが、大翔の先輩役の藤原季節、故郷の港町の恩人役の川瀬陽太がきっちりと引き締めていました。

 さて、日本のメディアではあまり騒がれませんでしたが、瀬戸は今年のモスクワ映画祭で日本人としては大竹しのぶ以来20年ぶりに主演女優賞を受賞しました。インディーズでノースター、常間地監督は撮影当時22歳で、映画学校の卒業作品をもとにした長編初監督という異例づくめ。

 ただ、かつては4大映画祭といわれたモスクワ映画祭も、ウクライナ情勢の影響で国際映画祭の認定を取り消されており、参加することがプーチン政権のプロバガンダになるとの批判もでています。実際に、審査員特別賞を受賞したブルガリアの監督はプーチン批判をして、受賞を辞退しています。でも、僕が観た限り、日本のマスコミで今回の受賞についてそのへんを書いているところがないのですよね。
僕は舞台挨拶を見ており、常間地監督、瀬戸さんともにその点に触れられており、平和を訴えていましたけれど、日本からそのような映画祭に参加することが是か非か、僕には芸術と国際情勢の関係はなかなか単純に割り切れません。

posted by 映画好きパパ at 06:01 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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