作品情報 2023年日本映画 監督:宮武由衣 出演:黒木瞳、桜井日奈子、平岡祐太 上映時間119分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:渋谷シネクイント 2023年劇場鑑賞210本
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【ストーリー】
派遣切りにあった若林恵麻(桜井日奈子)は仕事もなく、深夜の町をさまよううちに不思議な香水店にたどり着く。店主の白石弥生(黒木瞳)は香水の深い知識と洞察力で「魔女」というあだ名がついていた。恵麻は香水店でアルバイトをしながら勉強をしていく。
1年後、香料会社に派遣社員として採用された恵麻は、先輩の高渕(小西真奈美)、同僚の河原(川崎鷹也)、香水店の常連で取引先の社長、横山蓮(平岡祐太)らの応援で新しい香水を開発する。しかし、派遣社員なのにと評価されずまたも派遣切りに。恵麻は失意のどん底のときこそ、自分らしく人生を楽しむようにとの弥生のアドバイスもあり、香水会社を起業することにしたのだが…
【感想】
俳優の格もあるのでしょうけれど黒木瞳が主役の扱いで、冒頭とエピローグも彼女のエピソードなんですが、実質的に恵麻が主演。弥生はアドバイス役でしかありません。魔女の能力もその後の展開と効果的に結びついたとは思えない。また、弥生を目立たせようと、夫(小出恵介)のDVに悩む若い女性・舞(水沢エリナ)が相談にくるエピソードもいれてますが、恵麻の話とまったく結びついてなく、むしろテンポを悪くします。
恵麻のほうも、香料会社でのエピソードは報連相の基本をしていない本人が悪いとしか思えず、それなのに被害者扱いするのはなんだかなあと思えました。起業してからも、偉そうな人たちに売り込む姿があるけれど、これも起業家ならもっと計画をきちっとしろといいたい。まあ、実際の起業家志望の若者にも考えが甘い人もいるそうだけど、偉そうな人がちゃんとアドバイスしているのに、それが身になったと思える描写が無いんですよね。
映画のスポンサーが香水会社とあって、香水の知識は観客にも伝わってきます。でも、恵麻がなぜそこまで香水に関する能力を開花するかも今一つ。脚本も手掛けた宮武監督はTBSの社員でテレビ畑の人なので、どうしてもぱっと見の分かりやすさやご都合主義になってしまうのかなあ、
ただ、女性監督だけあって恵麻の撮り方は非常にうまい。セクハラを止めようとして派遣切りになるくやしさ、猛勉強をするときのランランとした表情、そして何よりも連との運命的なエピソード。冒頭に書いたように、キスシーンの美しさは邦画でも屈指のものでした。スポンサー企業や女優の格などいろいろ大変でしょうけど、完全に恵麻を主演にして、もう少し深みのある脚本にしたら傑作になったのになと惜しい気がしました。なお、劇中のエクセルに2018年という文字があり、町のシーンでもマスク姿は皆無なので撮影はそのころだったのでしょうかね。
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