2023年07月01日

リバー、流れないでよ

 京都の劇団で「サマータイムマシン・ブルース」「ドロレスの果てで僕ら」など日常にちょっと不思議な出来事が起こるSFを手掛けてきたヨーロッパ企画の最新作。限定した空間で、なかなかニヤリとさせる伏線の数々はさすがでした。

作品情報 2023年日本映画 監督:山口淳太 出演:藤谷理子、永野宗典、本上まなみ 上映時間86分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ  2023年劇場鑑賞212本



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 【ストーリー】
 京都・貴船の旅館ふじやはシーズンオフの冬、宿泊客も少なく従業員ものんびりすごしていた。ところが、仲居のミコト(藤谷理子)は番頭(永野宗典)と話しながら部屋の後片付けをしているとき、突然、時間が2分巻き戻ってしまう。しかも、2分間のタイムリープは何度も繰り返されるのだ。

 女将のキミ(本上まなみ)、ミコトの交際相手で料理人のタク(鳥越裕貴)をはじめとする従業員、小説家のオバタ(近藤芳正)ら数人の宿泊客もタイムリープの繰り返しに巻き込まれて大困惑。なんとか事態を打開しようとするのだが、ミコトには原因に思い当たることがあって… 

 【感想】
 のんびりした冬の昼下がり。従業員も客もごく普通の生活をしていたのに、タイムリープを何度も繰り返すとは思ってもみなかったでしょう。日常のちょっとした変化だけに受け止め方もさまざま。何度もおかゆを食べ続けることになり困惑する客や、締め切りがせまっていたオバタはこのままタイムリープが繰り返されれば、原稿を書かなくてもいいし大喜び。このへんの悲喜劇は、さすが演劇集団というかんじ。

 それでもキミをはじめ従業員の一部は、客への責任もあり何とか事態を打開しようとします。しかし最大の問題は2分たったらまたタイムリープしてしまうこと。最初は旅館の上階にある大広間が作戦本部だったのに、2分ごとに階段を上るのに疲れてしまうとか、2分という短い時間を巧くつかってます。もっとも、体感的には2分以上たっていそうなときも多かったですけど。

 この日常とSFの組み合わせは、自分もこういうことに巻き込まれたらどうなるだろうという感情移入がうまれます。恋や仕事の悩みといった日常もタイムリープでリセットされ、さらに、どうせ2分前に戻るのならばと自殺する人がでるなど、ひどい出来事などがスパイスになり、何度も同じシチュエーションのはずなのに飽きさせません。従業員、客、そして謎の観光客(久保史緒里)とキャラクターの使い分けもうまくできています。撮影中に天気が代わり、雪が降ってくるアクシデントもうまくストーリーに取り込んでいて感心しきり。

 ロケ地のふじやは江戸時代創業の実在の旅館で、なんと藤谷の実家だそう。単なるロケ地でなく、本当に旅館で起きているんだという気持ちにさせられます。タイトルは旅館の前を流れる貴船川からきています。貴船は行ったことがないのだけど、一度、この旅館に止まりたくなりました。
posted by 映画好きパパ at 06:39 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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