2023年07月14日

断捨離パラダイス

 ごみを切り口に笑えて泣けるヒューマンドラマの傑作。実家がごみ屋敷になりかけているので、ぜひとも断捨離パラダイスに来てほしいと思いました。

作品情報 2022年日本映画 監督:萱野孝幸 出演:篠田諒、北山雅康、泉谷しげる 上映時間101分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ  2023年劇場鑑賞229本



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 【ストーリー】
 福岡のピアニスト、白高律稀(篠田諒)は原因不明の手が震える病気で引退。子供向けのピアノ教室の講師では食っていけず、たまたまチラシで見つけたごみ屋敷専門の清掃業者「断捨離パラダイス」に就職する。

 ひょうひょうとした社長の市木(北山雅康)のもとで、さまざまなごみ屋敷の清掃を手掛ける白高。そこには、さまざまな理由があることを知っていく。

 【感想】
 子供のころからうちの家系は片付けが下手。実家はごみ屋敷寸前になっています。非常に面倒臭がりなところがあって、例えば服とかを畳んでしまうより、机の上においてたほうがすぐに着られるとかそんな感じです。しかも実家は広いうえ、田舎なものですから草刈りとか大変で、この間も作業中、鎌で手を切ってしまったほど。こうなると業者にお任せしたいのですが、東京近郊に断捨離パラダイスのような良心的な業者はいないかな。

 映画では最初に白高が訪れた現場は、明らかなCGですがGが大量に動き回るなど観ていて気持ちがわるくなります。素人だった白高が気絶するのもむべなるかな。そんな汚部屋でも気にせず片づける断捨離パラダイスの面々は本当にプロ。感心してなりません。また、そもそもこれはゴミなのか、それとも持ち主のこだわりの品なのか。哲学的な問題も突きつけられます。

 ごみ屋敷の住人としてはシングルマザーで子供を風呂に入れられないほど散らかっている明日華(中村祐美子)、帰国前に部屋を掃除したいと希望するフィリピン人の介護士グズマン(関岡マーク)、近所で悪評ぷんぷんごみ屋敷の頑固な老人金田(泉谷しげる)、部屋が汚すぎて恋人を家に上げられず浮気を疑われる小学校教師の万莉子(武藤十夢)の4人のケースが紹介されます。4人とも直接的な原因は映し出されないけど、それぞれがなぜこうなったのか暗示する場面もあり、単純にだらしがないだけでないことがわかります。このあたり、説明過多だったりいかにも泣かせようという邦画が多い中、好感がもてる演出です。

 各エピソードは微妙につながっていて、序盤で違和感を覚えたシーンが終盤でしっかりと活かされるなど伏線の使い方もうまい。さらに、日常を抑えた反動ともいえるごみ屋敷の住人たちが思わずとる行動も、スカッとさせられます。萱野監督は脚本も手掛けており、まだ若いのに手練れの風格がでています。猫は実際どうだったのか、観客の想像にまかせるところもうまい。低予算なのはわかるけれど、スタッフもキャストも工夫していることがよくわかります。

 キャストも泉谷しげるをのぞけばノースターなところがいい。優しいけど臆病な白高、ひょうひょうとしているけど、考えるところは考える北山など役柄にぴったり、また、中村、武藤が美人にもかかわらず、汚部屋で暮らすとこうなるのかということを実感させてくれました。エンドロール中のシーンとエンドロール後のおまけがたまりません。ところで、劇中のキーアイテムといえる明治のお菓子ヤンヤンつけボーのことを知りませんでした。世の中まだまだ知らないことが多いな。

posted by 映画好きパパ at 06:15 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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