作品情報 2023年アメリカ映画 監督:グレタ・ガーウィグ 出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラ 上映時間114分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマグランベリーパーク 2023年劇場鑑賞274本
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村
【ストーリー】
バービー人形たちが暮らすバービーランド。大統領、裁判官など女性が中心のバービーランドでは、バービーやボーイフレンドのケンたちが毎日ハッピーに暮らしていた。ところが定番バービー(マーゴット・ロビー)が、ダンスパーティーの最中に、「死」について考えたことから、人間界との間に裂け目ができ、異常事態が相次ぐ。
定番バービーは原因を探るべく人間界へ行く。一方、彼女のボーイフレンドのケン(ライアン・ゴズリング)も無理に同行。そして人間界は2人の想像を超えた世界だった…
【感想】
最初に、オッペンハイマーとのコラボしたミームを、ワーナーのX(ツイッター)がいいねしたため炎上した件ですが、正直、僕はそれほど気になりませんでした。ハリウッドの原爆の描写はいい加減で、「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」や「トゥルーライズ」は本編で原爆をおかしな風に使っています。エンタメにきのこ雲を使うのをけしからんというならば、ガンダムシリーズやヤッターマンなど日本の有名アニメでも核爆弾やキノコ雲は使われています。もっといえば、東京が原爆テロリストに襲われる「太陽を盗んだ男」なんか、原爆だけでなく皇居にバスジャック犯が突っ込んで天皇の戦争責任を追求しています。リアルでも産経新聞が日本の核武装論議論を訴えていますし。もちろん、今回の騒動で被爆者をはじめ不快に思う人が出ても当然ですが、それでも「バービー」だけことさら炎上しているように見えました。
さて、映画そのものの感想ですが、まず予告編がいい意味で裏切ってくれました。また、家父長制への批判映画とされていますが、単に女性アゲのフェミニスト映画ではなく、女らしさ、男らしさという固定観念そのものを笑い飛ばす作品であり、男性の僕が見ても決して不快ではありませんでした。以下バービーとケンの役名はみな同じなので、マーゴット・ロビーを定番バービー、ケンはライアン・ゴズリングが演じたケンのことです。
バービーランドは女性に支配され、女性だけが楽しんでいるというのはリアル社会が男性に支配されていることの裏返し。それに影響を受けるケンの滑稽さは、本当にあなたは今のリアル社会に満足していますかということ。マチズムの男性を好むなら強い男が支配して当然と思うでしょうが、僕は一人一人が自分らしく生きられるほうがはるかに好み。定番バービーとケンの騒動は、ユーモアに包まれているだけにうまい描写。
また、リアルの人間社会で定番バービーを助けるグロリア(アメリカ・フェレーラ)とサーシャ(アリアナ・グリーンブラット)の親子の物語は、家父長制とは違った観点から母娘の葛藤、家庭の働き方のあり方などを投げかけてくれます。加齢からくる死への漠然とした不安というのは、中年を過ぎたら多くの人に出てくるのではないでしょうか。死とは何かという大きなテーマまでしっかりと見据えているのは、さすがガーウィグ。
もう一つ、定番バービーとケンは人形だから生殖器がありません。字幕ではつるぺたになっていましたが、英語では「NO PENIS」ともろに言っていました。恋愛、性交至上主義に一石を投げかけつつ、最後の定番バービーの選択はなかなか考えさせられます。好意ったところもシリアスでなくコミカルに描いているのがいいですね。
マーゴット・ロビーは定番バービーそのものの金髪で見事なスタイル。劇中、ナレーターのヘレン・ミレンがそのことに突っ込むところもあります。さらに、オッペンハイマーのミーム動画では、マッチョなオッペンハイマーの肩に乗ってはしゃぐマーゴットと、フェミニズムのかけらすらみえません。その彼女があえて定番バービーを演じることで、逆説的に物語の奥が深まりました。
ゴズリングはケンを演じるには年上との批判も事前にあったそうですが、「ラ・ラ・ランド」でみせたように音楽の才能は素晴らしく、本作も彼の演技が花を添えます。また、バービーを作っているマテル社のCEOにウィル・フェレルを起用したのはすごいセンス。マテル社も自虐的な描写をよく許したと感心しますが、取締役会が男性ばかりなのに驚いた定番バービーにウィル・フェレルの反応が、まさにコメディーの天才という反応でした。
また、豪華ミュージシャンがそろったBGM、序盤のピンクだらけの世界から始まるファッションや世界観などとにかくゴージャスの一言。観ないのはもったいない作品だと思いました。
【2023年に見た映画の最新記事】