2023年08月20日

アウシュビッツの生還者

 戦後80年近くたっても、アウシュビッツをテーマにした映画は毎年公開されています。本作は「レインマン」などアメリカの大ベテラン、バリー・レヴィンソンがメガホンを取ったことと、アウシュビッツを生き残った後、戦後どうやって暮したのかということに力点が置かれているのが他の作品とは違っており、まだまだいろんな角度の作品ができると思いました。

 作品情報 2021年ハンガリー、アメリカ映画 監督:バリー・レヴィンソン 出演:ベン・フォスター、ヴィッキー・クリープス、ビリー・マグヌッセン 上映時間129分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2023年劇場鑑賞276本



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 【ストーリー】
 1949年、アウシュビッツを生き延びてアメリカに渡ったハリー・ハフト(ベン・フォスター)は、ポーランドで生き別れた恋人のレア(ダル・ズーゾフスキー)を探すために、ボクシングのチャンピオンになろうとしていた。

 ハリーは収容所でボクシングの才能を親衛隊のシュナイダー(ビリー・マグヌッセン)に見抜かれ、看守たちの娯楽としてボクサーにさせられていた。負ければ殺される命がけの勝負。自分が生きるためにユダヤ人の仲間を結果的に殺すことになったハリーは深い心の傷を負っていた。戦後、必死にレアの行方を探すハリーに、米国ユダヤ人協会の職員、ミリアム(ヴィッキー・クリープス)が協力することになったのだが…

 【感想】
 昨年はやはりアウシュビッツで収容された囚人タデウシュ・ピトロシュコスキを描いたポーランド映画「アウシュヴィッツのチャンピオン」が公開され、てっきり彼が主人公だと思いましたが、同じような体験をした人が別にいたのですね。

 本作はアウシュビッツのシーンはモノクロで、戦後のシーンはカラーで描かれており、くっきりとわかれていました。アウシュビッツのシーンは英語が使われていましたが、戦後、アメリカに移住したハリーが英語で回想したという設定なら納得できます。

 アウシュビッツのシーンは目を覆うような悲惨な場面の連続。特に、ヒトラーをバカにして戦争で負けることを見抜いているのにシュナイダーが他の看守同様、悪辣なことをするのには戦慄しました。シュナイダーは、ユダヤ人が抵抗しなかったのが悪いと虐殺を正当化しますが、日本の平和ボケした反戦運動家にこういう悪そのものの独裁国家があるということをみせつけてやりたい。

 一方、抜け殻となっていた戦後のハリー。しかも周囲は彼に冷たい。「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」でも少し描かれていましたが、収容所で生き残ったことでかえって差別される風潮が戦勝国でもあったというのは驚きです。そんななかでも彼を支えたのはミリアムですが、彼女は戦時中も米国にいたので収容所の苦しみは実体験していません。そのギャップがしだいにハリーをむしばむ様子もなんともつらい。

 収容所の痩せこけてぎらついた目と、戦後の抜け殻のような表情をともにしっかりこなした主演のベン・フォスターのほか、レビンソン監督作品ということもあってか、ピーター・サースガード、ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィートといった渋いメンツが脇役で出ています。

posted by 映画好きパパ at 07:31 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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