2023年09月23日

バカ塗りの娘

 予告編からよくありがちな伝統工芸万歳みたいな話と思いきや、途中で変化球を入れてきました。ただ、津軽塗のピアノの良さが素人の僕にはよくわからなかったw

 作品情報 2023年日本映画 監督:鶴岡慧子 出演:堀田真由、小林薫、坂東龍汰 上映時間118分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座  2023年劇場鑑賞319本



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村



 【ストーリー】
 何度も工程を繰り返し、バカ丁寧なために「バカ塗り」と呼ばれる青森県の伝統工芸、津軽塗。青木美也子(堀田真由)は職人の父、清史郎(小林薫)の作業を手伝い、将来は職人として一本立ちをしたかった。コミュ障な美也子にとり、津軽塗に打ち込むときこそ自分らしさを出せたのだ。

 だが、昔気質の清史郎は女が職人になることを鼻から認めない。ところが、跡継ぎになると期待していた美也子の兄、ユウ(坂東龍汰)が美容師の勉強にロンドンに行くと言って父親と大喧嘩。清史郎の妻・多美子(片岡礼子)は仕事一筋の清史郎に愛想をつかして何年も前に家出していた。果たして美也子は…

 【感想】 
 小林薫が劇中、倒れたら何度目かと突っ込もうと思ったら、清史郎の父で津軽塗の名人といわれた清治(坂本長利)が老人ホームに入っていて意表をつかれました。小林薫のよくある名人で病気に倒れて娘に託す、のではなくて清史郎は名人と言われた父親と比べられてもがいており、さらに、父の健康も気になる。たんなる父娘の物語でなくて、3代にわたる視野の広さがまずポイントです。

 それから、美也子は納入先の結婚式場で話せるようになった花屋の尚人(宮田俊哉)に片思いですが、コミュ障なので不審な行動をとってしまいます。そのうえ尚人にも思いがけないつながりがあることで、これまた単調な暗くて地味なヒロインがイケメンになぜか惚れられるという邦画の安直パターンを突き放します。鶴岡監督は脚本もてがけていますけれど、唯一無二といって良いような作品に仕上げました。

 冒頭、ほぼ無音で清史郎が津軽塗を作り、美也子がそれを手伝うシーンが流れます。伝統芸能のドキュメンタリーじゃないのにとあまりひかれませんでしたが、実はタイトルとこの冒頭にあるように、バカ丁寧に作品を撮ることで、津軽塗との一体感もできたといえるでしょうか。そのうえ美也子の若い感性が加わり、単なる古いものを伝えるだけではない、温故知新を体現したような感じが心にしっとりきます。

 堀田真由は丁寧な演技で、最近あまり見なかった役柄だけど本領を発揮。安定の小林薫との親子関係が微笑ましい。坂東ともども小林と親子役で良い勉強になったのではないでしょうか。木野花、篠井英介らベテランをうまく脇に配しているとともに、出番は少ないけれど王林、ジョナゴールドという青森発のアイドルをうまく物語に溶け込ましているのも、地方を舞台にした映画としてほっこりしました。
posted by 映画好きパパ at 19:00 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。