作品情報 2023年日本映画 監督:石井裕也 出演:宮沢りえ、磯村勇斗、オダギリジョー 上映時間144分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:横浜ムービル 2023年劇場鑑賞370本
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【ストーリー】
スランプで新作が掛けない小説家の堂島洋子(宮沢りえ)は人間観察のために森の奥にある重度障害施設で働くことになる。だが、意思の疎通が難しい入居者は非人間的な扱いを受け、職員同士のいじめも蔓延していた。
若手職員のさとくん(磯村勇斗)、坪内陽子(二階堂ふみ)と親しくなった洋子は、売れないアニメ映画監督の夫昌平(オダギリジョー)も含めて家族ぐるみの付き合いをする。だが、正義感あふれていたさとくんが意思の疎通の出来ない障害者は殺害すべき、と言い出して…
【感想】
辺見庸の原作は未読。ただ、本作ではさとくんはあくまでも脇役にすぎません。洋子は妊娠しているうえ、かつて障害児を失ったことがおり、命の大切さを対比させる意味はありました。ただ、作家という属性、しかも坪内陽子も同じく作家希望という設定にどういう意味があるのかわかりませんでした。昌平のアニメ作家設定も本筋と関連が薄い。
また、さとくんの言っていることは薄っぺらいわけでなんですが、堂島家や坪内家が描かれているのに、さとくんの家族というのは一切描かれません。いったいどんな生育環境にあったのかというのは、この手の題材を取り扱うときに重要だと思っているのですが、単に職場のいじめでおかしくなって殺害に至ったとしかみえないのです。大量殺人をしたからには、もっとさとくんを掘り下げるべきではなかったでしょうか。
唯一さとくんには聾唖の彼女(長井恵里)がいます。だから障害者差別でないけれど、意思の疎通ができないのは人間でないというのが、さとくんの理屈なんですがよくわからない。差別主義者が自分の友達に少数派がいるから差別でないんだというよくある理論をさとくんに言わせたかったのか。
宮沢りえの深刻な演技にオダジョーのひょうひょうとした中に見せる陰はさすがに巧い。磯村の狂気は「ビリーバーズ」でも見ましたけど、イケメンだけに迫力があります。俳優陣は良いし、障害者施設の入居者虐待を暗いトーンの映像でみせるなどの場面はさすがだと思いましたが、作家夫婦を主人公にしたことで最後まで作り物感を受け、他人事のようにみてしまいました。
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