作品情報 2023年日本映画 監督:児玉宜久 出演:北乃きい、森崎ウィン、小泉孝太郎 上映時間120分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2023年劇場鑑賞385本
【ストーリー】
明治37年、福井の寒村の庄屋の娘、久々津むめ(北乃きい)は隣村の増永家との結婚が決まった。一度見たことのあるイケメンの幸八(森崎ウィン)が相手と心がときめいたが、実際に結婚したのは堅物の兄の五左衛門(小泉孝太郎)。幸八は大阪の眼鏡商、橋本清三郎(佐野史郎)のところへ方向に出ていたのだ。
豪雪で貧しい村を何とかしたいという五左衛門に幸八は眼鏡づくりを提案する。だが、当時の福井には眼鏡を作るどころか、観たことすらない人が大部分だった。橋本の協力を得て職人の豊島(津田寛治)らを福井に派遣してもらい、何とか始めた眼鏡づくりだったが、まったく売れず、増永家は資金難に陥り…
【感想】
冒頭、現在の福井県の観光ビデオが5分ほど流れました。ご当地映画は最近はやりとはいえ、本編と関係ないPRビデオまでついてくるというのは初めて見ました。それはさておき、明治のプロジェクトXといいましょうか。手探りで眼鏡づくりを始めた増永兄弟や村人たちが悪戦苦闘の末に産業として確立するまでを描いています。
ただ、観ていて分からなかったのが2点あり、一つはむめと幸八の関係。冒頭、久々津にお使いで訪れた幸八がむめとウフフキャキャキャするところから始まったので、2人の恋愛なり五左衛門を含めた三角関係が起きるのかと思いきや、実在の人物を描いていることもあって恋愛フラグはそうそうに消失。それどころか、主人公はむめのはずなのに、中盤以降は増永兄弟や眼鏡づくりの動きに完全にシフトしてしまいました。
もう一つは、ゼロからスタートして一大産業に成長させたのはすごいのですが、なぜ福井でそれができたかが今一つ分からなかったということ。一応、大工の末吉(駿河太郎)の腕がすごかったということになっていますが、日本中に腕の立つ大工はゴロゴロいたでしょう。東京や大阪といった消費地と離れた福井でなぜ産業を確立できたのか、増永兄弟の熱意だけしか要因が映画ではわからず、ちょっと歯がゆい思いをしました。
しかし、真面目に作られている一方、視力の悪い末吉の幼い娘が生まれて初めて眼鏡をかけてものがはっきりみえて喜ぶといった感動的なエピソードを差し込んでいます。また、先祖代々の土地や家財道具を売り払ってまで眼鏡にかけた増永一家の熱い思いも伝わってきます。こういう人たちが各地にいたから、日本の近代化は成功したのだと思わされました。
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