作品情報 2022年韓国映画 監督:チェ・グッキ 出演:リュ・スンリョン、ヨム・ジョンア、オン・ソンウ 上映時間122分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2023年劇場鑑賞389本
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【ストーリー】
平凡な主婦のセヨン(ヨム・ジョンア)は亭主関白の夫ジンボン(リュ・スンリョン)、無気力な長男のソジン(ハ・ヒョンソン)、反抗期の長女イェジン(キム・ダイン)の4人家族。毎日家事に疲れ、他の3人からは女中のように使われていた。
ところが、セヨンが肺がんで余命2カ月と分かる。セヨンは残された人生でやり残したことをしたいと、高校時代の初恋の人、チョンウ(オン・ソンウ)に再会したいと思う。そのため、ジンボンに頼み込み、長年、音信不通だったチョンウの居場所を一緒に探す旅に出るのだが…。
【感想】
序盤はジンボンの亭主関白ぶりにあきれました。「82年生まれ、キム・ジヨン」で描かれているように、韓国の男尊女卑ぶりは日本の比ではありません。ガンの告知を受けた当日に、トイレットペーパーが切れていると文句をつけるのはもはやサイコパス。一応、ショックのあまりというエクスキューズがあとで付け加えられますが、それにしてもひどすぎ。
また、セヨンが高校生の息子ソジンに異様に甘く、塾通いのために滋養強壮薬などをせっせと飲ませるというのも韓国らしい。韓国の受験競争の激しさはこれまた日本とは比べ物になりませんし、前述のように男の子に対する期待も日本では考えられないほど。こういった韓国社会あるある、どこにでもあるような一家にしたというのは作り手の意図なんでしょう。
そして、初恋の人を探してロードムービーが始まるわけですけど、今の人生のおかしさ、むなしさに気づくとともに、失ってきた大切なものを思い出していきます。それは初恋だけでなく、今や倦怠期となったセヨンとジンボンの出会ったころのときめき、大切な気持ちもです。また子どもが産まれたときの喜びなど、一見、平凡に見える人生でもこんなにも幸せがあったのか、2人にも観客にも実感させられます。
ミュージカルはインドやアメリカに比べるとスケールが小さいのですが、その分、手作り感のようなものが伝わってきます。また、歌は韓国では有名な歌謡曲ばかりだそうですけど、歌詞が状況によくあっていて、僕自身、自分の人生を振り返り、死ぬ前にやりたいことや自分の人生でうれしかったことを次々と思い出してきました。
「箪笥」などで美人女優ぶりを発揮したヨム・ジョンアももう50歳。SKYキャッスルはみていないのですが、良い年の取り方をしたと見受けます。「エクストリーム・ジョブ」「7番房の奇跡」など数々のヒット作で主演したリュ・スンニョンも安定した演技力。何より、前作の「国家が破産する日」で、複雑な経済事件をエンタメに見事に落とし込んだチェ・グッキ監督が、こんなヒューマンストーリーを手掛けるというのは意表をつかれます。世知辛い世の中だからこそ、多くの人に見てもらいたい作品でした。
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