2023年11月14日

理想郷

 スペインの農村に移住したフランス人夫婦が徹底的な嫌がらせを受ける暗い映画。日本でも移住者のゴミを回収しないなどの嫌がらせがニュースになったりしますが、日本の国民性ではなく、田舎の閉鎖性はどこの国も一緒ということなんでしょう。

 作品情報 2022年スペイン、フランス映画 監督:ロドリゴ・ソロゴイェン 出演:ドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイス、ルイス・サエラ 上映時間138分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿  2023年劇場鑑賞390本



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 【ストーリー】
 フランス人のアントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)とオルガ(マリナ・フォイス)は都会の教師生活をやめて、理想だった有機農法に取り組むためスペインの農村に移住した。景色は良く、土地も肥えておりまさに理想郷と思われた。

 ところが、元教師というインテリに貧しい村人たちは反感を抱いてたうえ、村の環境を破壊する発電施設の建設計画に反対したため、村八分のような状態になってしまう。さらに、作物を枯らされるなどの嫌がらせが続き、ついには…

 【感想】
 ヨーロッパの田舎の閉鎖性を描いた作品は「ヨーロッパ新世紀」も同時期に上映されていますけど、あちらはアジア人への差別で低賃金労働の移民蔑視を描いていました。本作は同じ白人で、しかも都会のインテリが対象。貧しく学歴もない自分たちより偉ぶっていると恨みを募らせる田舎の閉鎖性は同じくしんどい。

 発電計画が村の環境破壊だけでなく、外国の会社に安く土地を買いたたかれて経済的にもマイナスになるから反対しており、代わりに古民家カフェによる観光客誘致を提案します。しかし、貧しい村人はたとえ買いたたかれるとわかっていても目先の補償金がほしい。さらに、中高年ばかりで若者は都会へ逃げ出す。残って農業をついでもこんな辺鄙なところにくる嫁はいません。貧しく、愚かだと裕福なものを妬み、長期的な発想がなくなることがよくわかります。

 一方、アントワーヌも理想を求めて移住したこともあり頑固なところがあります。もともと非社交的な性格もあり、酒場にいってもボッチで飲むだけ。村人の下品な下ネタにも付き合わず、顔をしかめるだけです。こうした映画を見ると、日本でも田舎への移住ブームですが、そう簡単にいかないことがわかります。

 前半が田舎の閉鎖性を描いた社会派の陰鬱な作品とすれば、後半は夫婦の信頼、愛の物語に転調します。村人に差別を受けるアントワーヌ夫婦がどうなるのか。特にオルガの行動はちょっとは理解しにくい部分もあるけれど、家族の愛、プライドを守るためにはほかに手がなかったのかもしれません。最後は胸がすく終わり方を期待したら、ブツっと終わらせたことにも、この作品、ひいては田舎の底意地の悪さを感じさせられました。
posted by 映画好きパパ at 06:10 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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