2023年11月17日

シック・オブ・マイセルフ

 SNSでの承認要求が高い現代社会を痛烈に風刺した怪作。ヒロインの行動はあきらかに行き過ぎですが、似た部分は自分にもあるなと反省させられました。

 作品情報 2022年ノルウェー映画 監督:クリストファー・ボルグリ 出演クリスティン・クヤトゥ・ソープ、アイリク・サーテル、ファンニ・ヴァーゲル 上映時間97分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷シネクイント  2023年劇場鑑賞393本



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 【ストーリー】
 ウエイトレスのシグネ(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)は恋人のトーマス(アイリク・サーテル)が新進気鋭の芸術家として注目されるのに嫉妬を感じていた。ある日、店で重傷の女性を救助した彼女は救急隊や周囲の客から称賛を浴びる。

 注目を受ける快感に目覚めた彼女はどうすれば良いのか考えた挙句、副作用のある薬を違法に入手。全身を発疹まみれにして可哀そうな病人として注目を浴びようとするのだが…

 【感想】
 もともとかまってちゃんのシグネ。トーマスが注目されると話を無理に遮って自分のことをアピールして、周囲からうざがられます。さらに、ウソも平気でついてとにかく自分への注目を得ようとしており、正直、こんなメンヘラ女性とさっさと別れればいいのに、と思ってみてました。

 そのうえ、自分を病気に見せかけるのはなんとも見苦しい。しかし、皮肉なことに彼女の目論見は成功します。原因不明の奇病として新聞に取り上げられ、家族や友人も彼女のことを真剣に心配します。幼い子供が泣いて自分の注目を集めるようなことを大人になってもしているのですけど、SNSをみると現実にもウソをついてまで注目を集めたい人が多いこと。自分自身、恰好つけてささいなウソをつくこともあり、彼女の姿にちょっと反省しました。

 一方、そんなシグネに付き合うトーマスも、だんだん常識が悪い意味で通用しない男だということが分かってきます。ある種の似たもの同士といえるでしょう。シグネほど表に出ませんが、多くの人に自己承認要求があることがわかります。この二人のねじれた愛情はなんともグロテスクだけど、リアルさを感じられます。

 さらに、発疹まみれの彼女を利用しようとするマスコミ、代替医療の医師、多様性の名目でモデルに起用するファッション業界など、利益優先の大人たちの醜さも描かれます。これまた現実にもありえそうなこと。北欧の独特のシャープな映像で現代社会のグロテスクさが余計に際立ちます。

クリスティン・クヤトゥ・ソープ扮するシグネはもともと美人なので、承認要求が強すぎなければまっとうな人生を歩けたはずなのに、特殊メイクか発疹まみれになった自分のほうを気に入っているという倒錯したヒロインを巧く演じていました。
posted by 映画好きパパ at 06:11 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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