作品情報 2023年日本映画 監督:庄司輝秋 出演:アフロ(MOROHA)、呉城久美、黒崎煌代 上映時間106分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:横浜ムービル 2023年劇場鑑賞396本
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【ストーリー】
宮城県石巻の沖合の小さな島、多部島に住む漁師のアキラ(アフロ)とシゲル(黒崎煌代)の兄弟。両親を震災で亡くし、叔父のタツオ(津田寛治)に助けられながら細々と漁に出ていたが、シゲルが発達障害気味なところもあり、生活は苦しく借金まみれ。
ある日、東京から島を訪れた著名漫画家の高橋美晴(呉城久美)が、いきなりアキラたちのぼろ家を1000万円で買い取ると言い出した。驚く2人に美春は50万円を手付金としてわたし、強引に住み込んでしまう。どうやら美春は東京にいられなくなったようだ。アキラは50万円を元手に、動画配信で島のゆるキャラ「ほやマン」を人気者にして、借金を返そうと計画するのだが…
【感想】
予告編から吉本系の沖縄を舞台にしたギャグ日常系かと思ってました。でもアフロは芸人ではなくて、バンド「MOROHA」のミュージシャン。しかも、ホヤは東北が名産なんですね。ここまで震災後のPTSDにがっつり取り組んでいる作品は、なかなか貴重です。
震災から10年以上たち、当時少年だった兄弟も大人になりました。しかし、両親の死亡届を出さないため補償金がもらえず、家は貧乏のどん底。両親の家を受け継いだという田舎特有の思いが枷となり、都会に行くことができません。ギャグテイストはこわさないままも、2人の震災経験から海や故郷へ対する愛憎はなんとも切なくなってきます。
そこへ都会から自由気ままに生きる美春が乱入。アキラは彼女に反発しつつも、彼女の存在で止まっていた時間が動き足したことも間違いありません。ユニークなのは、見春はまあ美人なのに、男2人と同じ家に暮らして何もおきないこと。Hなことどころか恋愛の気配すらもありません。現実では起こりうる話だけど、作劇では珍しい。この3人の不思議な人間関係も魅力ですし、何より両親が亡くなった後、助け合って生きてきただろう兄弟愛が、話が進むにつれて観ているこちらにもじんわり伝わってきます。
ほやマンはいかにも田舎の町おこしキャラで、しかも2人が動画撮影をしているので手作り感丸出し。それでも夢を感じてしまう2人は、これまた一見貧乏な田舎者に見えても、今の若者の感覚だと思いました。初主演のアフロなど3人は若手キャストですが、津田や隣家のおばちゃん役の松金よね子がしっかりフォロー。映画としての重層感を出しています。思わぬ拾い物。
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