作品情報 2023年日本映画アニメ 監督:西見祥示郎 声の出演:宮沢りえ、窪塚洋介、吉田帆乃華 上映時間94分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:Tジョイ品川 2023年劇場鑑賞403本
【ストーリー】
遥かなる未来、地球から逃亡したロミ(声・宮沢りえ)とジョージ(窪塚洋介)のカップルは、荒れ果てた未開の惑星に到着する。エデンと名付けて暮し始めた二人にやがてカイン(木村良平)という男の子も生まれる。だが、思わぬ過酷な運命が次々と押し寄せ…
【感想】
公式サイトでは中盤までストーリーが紹介されていますが、僕は前情報なしでみたので脚本の急展開ぶりに驚かされました。できれば前情報なしでみたほうが楽しめます。手塚の原作の「望郷編」とは結構、内容が変更されています。しかし、手塚が描くような雄大なストーリーと人間への冷徹な見方は健在。濃密で独特な劇場アニメで知られるSTUDIO 4℃制作だけあると感心しました。
荒れ果てたエデンの地での新生活は苦しいものでしたが、妊娠もしてロミにとって希望もあったものでした。しかし、物事はどんどん悪い方に行きます。原作紹介を読むと、さらにとんでもないことも起きていましたが、映画はどこまでダークではありませんでした。しかし、映画では欲望にまみれて平気で殺しあう人間の愚かさをこれまでもかと描いており、これでは火の鳥に人類が捨てられて、滅んでしまってもしょうがないかと思わされてしまいます。
一方、ヒロインのロミが死ぬ前に地球を一目見たいという思いが事態をさらに悪化させていきます。正直、人間はここまで望郷の念にかられるかというのは、人それぞれという気もしますけれど、本作の場合、多くの宇宙移民が最後に地球を一目見たいという思いにかられています。現実に先進国に移住してきた人たちもそうなんでしょうかね。僕なんか特に産まれた場所への思い入れがないので、ロミの思いがピンときませんでした。
数々の惑星やユニークな生物が登場して手塚漫画のスケールの大きさ、STUDIO 4℃のアニメ映画への反映ぶりには感心します。声優も宮沢りえや悪徳商人役のイッセー尾形はプロの声優以上に物語にはまっていました。また、人気子役として注目されている吉田帆乃華が物語のカギを握るコムという少年役で登場。木村や浅沼晋太郎といったプロの声優もきちんと支えています。もっとも窪塚だけははまっていませんでしたが。
上映時間は短いため、多少ダイジェストっぽさは残りますし、独特の世界観への説明も少な目で観客の想像に任される部分も多いです。しかし、これだけの壮大なスケールのアニメはそうそうなく、大スクリーンに観るのにふさわしい傑作でした。
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