2023年12月01日

戦国版「アウトレイジ」とはよく言ったもの。昨今の時代劇映画や大河ドラマが生ぬるいものだらけなので、本作のような欲徳まみれ血だらけの戦いというのは実際にそうだったのではと思います。

 作品情報 2023年日本映画 監督:北野武 出演:ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮 上映時間131分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:横浜ムービル  2023年劇場鑑賞413本




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 【ストーリー】
 1579年、家臣の荒木村重(遠藤憲一)の反乱を鎮圧した織田信長(加瀬亮)は、宴席で自分の跡目は最も手柄があるものに譲ると宣言した。羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島秀俊)ら重臣は色めきだった。


 一方、信長は行方不明の荒木をとらえるよう光秀に厳命する。ところが荒木は千利休(岸部一徳)の忍びの曽呂利新左エ門(木村祐一)に捕らえられ、光秀の居城の丹波亀山城にかくまわれていたのだ。信長の命令をかわすため、光秀は徳川家康(小林薫)が荒木をかくまっているとウソを言う。後継者争いの最大のライバル、家康を失脚させるためだ。思惑通り怒った信長は光秀に家康の暗殺を命ずるのだったが…


 【感想】
 「戦はいやだ」とか主人公は絶対に善という時代劇がまかりとおっているなか、登場人物すべて悪人というのはすがすがしいですし、戦国時代の特殊性を鑑みたらそのほうが正解でしょう。出世のためにはなんでもする、人の命など塵より軽いというのは当時は当然の倫理観です。主要登場人物の中では唯一の架空キャラ、難波茂助(中村獅童)が秀吉たちと違い、悪事を心の隅で後悔しているというのは、武士の世界と庶民の世界の差を見せつけていてます。

 本能寺の変の原因については独創的なアイデアを取り込んでおり、今まで聞いたことがなかった説ですけど、言われればさもありなんという話だったので興味深かった。とにかく信長が現在の感覚では狂っていると思えるような極悪非道の数々を繰り広げていただけに、武将たちの思惑もどぎついものになるわけでしょう。主要武将のなかでは唯一理性的な光秀も、信長に怒らわれた腹いせに庶民を虐殺しているのをみると、現在の人道的な感覚では生きていけないことがわかります。


 また、女性がモブでしかでてこないというのも、思い切った割り切り。その分、武将間の男色関係をしっかり描いていますが、戦国時代は当たり前だったのを痛切に思い知らせてくれます。合戦シーンも効果的につかっているし、昔のチャンバラを想起させる忍者の超人的な殺陣も娯楽時代劇の楽しさを思い出させてくれます。


 ビートたけしをはじめ、活舌が悪かったり尾張弁がきつかったりで聞き取りずらいところもありますが、雰囲気で乗り切るのはさすが。秀吉、秀長(大森南朋)、黒田官兵衛(浅野忠信)の3悪トリオが、真剣に悪事をしているのが滑稽に見える脚本もお笑いを熟知している北野作品らしく面白かった。真剣なゆえのお笑いをうまく描く作品は最近本当に見当たらくなくなりましたしね。「アウトレイジ最終章」以来6年ぶりの新作でしたが、まだまだ映画監督として傑作を作り出していってほしいものです。 
posted by 映画好きパパ at 06:02 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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