作品情報 2022年アメリカ映画 監督:アナ・リリー・アミールポアー 出演:チョン・ジョンソ、ケイト・ハドソン、エヴァン・ウィッテン 上映時間106分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2023年劇場鑑賞415本
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【ストーリー】
赤い満月の夜、精神病院に閉じ込められていた少女モナ・リザ(チョン・ジョンソ)は、相手の目をみるで操る超能力を使って脱走する。逃亡中のところをハロルド巡査(クレイグ・ロビンソン)につかまりそうになるが、超能力で逃げ出す。
おなかをすかせていた時に、絡まれていたストリッパーのボニー・ベル(ケイト・ハドソン)を助けたことから彼女の家に転がり込む。ボニーは幼い息子チャーリー(エヴァン・ウィッテン)を抱えるシングルマザーだったが、リザの能力を悪用して金儲けすることを思いつき…
【感想】
モナ・リザが何者で、どうして超能力をもっているかなどは潔いほどカット。彼女が精神病院を脱出してからの数日間を解説的なシーンなしで描いています。冒頭からポップな選曲でのBGMを多様しているし、赤い月をはじめ撮影も印象的なため、ストーリーの弱さは気になりません。エンディングロールを聞きながら、自然に体はリズムをとっていました。
同様の他の作品と似て非なるところは、モナ・リザは殺人はしないということ。追手や嫌な奴を片っ端から殺していけば観ている方はカタルシスはあるけど、本作は彼女に良心が残っていたのか、けがはさせるものの殺人まではいたりません。そのあたりの弱さも魅力的。けがをさせられたハロルド巡査が執念の捜査で追い詰めるのをみると、始末したほうがあとくされはないのですが、それでは別の作品になってしまいますものね。
一方、チャーリーとの年を離れた友情もみどころ。シングルマザーでネグレクト気味の母親にうんざりしていたチャーリーは突然現れた年上のお姉さんにどきどきします。超能力でいじめっこ追い払ってくれるのに、子どものころから精神病院に閉じ込められていたので社会常識が皆無の彼女を逆に守るシーンもあり、当初予定していたベルとの間ではなくて、チャーリーとコンビみたいになるというのは予期せぬ驚きでした。
さらに、人種差別的な言動や貧乏人のカネに困った暴力なども背景として描いていて、2020年代のアメリカ社会はこうなんだと分かる描写もいい。モナ・リザが出会うチンピラ、ファズ(エド・スクライン)との描き方も、苦しい社会の中でもほっとする場面があります。
村上春樹の小説を映画化した韓国映画「バーニング」で注目を集めたチョン・ジョンソのハリウッドデビュー作。なんともキュートな魅力で描いたのはアミールポアー監督の女性ならではの視点があるのかもしれません。小品ですが心に尖った印象を残す佳作でした。
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