作品情報 2023年日本映画 監督:塚本晋也 出演:趣里、森山未來、塚尾桜雅 上映時間95分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャック&ベティ 2023年劇場鑑賞427本
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【ストーリー】
戦争で辛くも焼け残った居酒屋を一人で営む女(趣里)。時には身を売って生活をしていた。ある日、戦災孤児の幼い少年(塚尾桜雅)が寄り付くようになり、何度追い払っても食べ物をねだる少年に、ついに根負けする。同じころ、元教師という復員兵の常連(河野宏紀)と同棲するようにあり、少年を交えた奇妙な家族ごっこがはじまる。
拳銃をもっていたため、女に居酒屋を追い出された少年はテキ屋の男(森山未來)にある計画に協力してほしいと頼まれる。行き場のない少年は、その男と行動をともにするようになったのだが…
【感想】
戦争直後、生き残ったのに心も壊れてしまった大人たちが登場し、少年のまっすぐな目で大人たちの闇、毒をみていきます。ある意味、ゴジラ−1.0の序盤部分の闇を煮詰めた感じでしょうか。子役の塚尾が令和の子役とは信じられないほど、昭和20年ごろの孤児になりきっていたのは感心しました。
ただ、戦争のつけた心の傷、PTSDというのはゴジラで見たばかりでもあり、エンタメ的に解決したゴジラとは違うとはいえ、またかという気になってしまったのも事実。説明的な描写を排除した塚本監督の画作りは緊張感があるとはいえ、モノクロでよく見えないこともあって前半は結構、意識がとんじゃいました。
後半の森山との一種のロードムービーになってからはカラーになったこともあり、目が覚めました。ただ、このストーリーは反戦のための観念的な感じ。前半とのつなぎてきなエピソードもないので、分断した2本の作品を観ているようで、ちょっとマイナス。戦後80年近くたつと反戦映画が貴重ですし、塚本監督のこだわりはわかるけれど、「野火」のような分かりやすく戦争で狂っていく人間を描くほうが好みでした。
趣里は同時期の朝ドラヒロインとはまったく真逆の、心に闇を抱えたダークな雰囲気とともに、体を売るためのゾクゾクとした色気をみせてくれ、すごい女優だなあとねじふせられます。疑似家族が川の字で寝るシーンに、人間の幸せとは何かをきっちり浮かび上がらせてくれる彼女もすごかった。その世界観にぴったりの子役もどこで発掘したのかわからないけど、ただただすごいと感服するばかりでした。
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