作品情報 2021年日本映画 監督:井坂優介 出演:木原渚、長野こうへい、佐藤あかり 上映時間139分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャック&ベティ 2023年劇場鑑賞428本
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村
【ストーリー】
ピザ屋のバイトをしながらミュージシャンを目指していた健悟(長野こうへい)は恋人のさゆり(佐藤あかり)が事故死したため、夢も希望もなくなっていた。ある日、怪しげな祈祷師・哲史(手塚眞)の家にピザを配達にいった健悟は、さゆりの幽霊と合わせてやるという哲史の言葉に驚く。
半信半疑だった健悟だが、家に帰るとさゆりの幽霊がまるで生きてるかのようにいて、2人の奇妙な同棲生活がはじまる。哲史の娘の海花(木原渚)は、健悟にたいして幽霊と暮らすのは人間のためにならないと警告するのだが…
【感想】
親しい人が亡くなったらもう一度会いたいと思うのは人情で、亡くなったほうも恐らくこの世に未練があるでしょう。そんな二人が再び出会って、やがて切ない別れをするというプロットはいくつもあるのだけど、海花のいう通り人間と幽霊は違う世界に住んでいるのだから、そもそも一緒になること自体がおかしいのです。さゆりとの生活がラブラブだっただけに、その真実はつらいもの。
その海花はなんともバイオレンス。幽霊を成仏させるために無茶苦茶暴力的な手段をとっていきます。普通の映画なら、人間側はそれで救われるのだろうけど、本作は必ずしもそうならないビターな仕上がり。でも、幽霊は成仏させるもの、という海花の揺るぎのない考えは見ていてすがすがしい。また、女子高生姿で幽霊をぼこぼこにする絵作りはあるようでないよなあ。
一方、健悟やほかの海花をめぐる人物も、幽霊にとらわれるというのは過去にとらわれること。それで元気になったとしてもかりそめのものでしかないわけです。それを乗り越えられるのは人間の強さですが、乗り越えられない弱さがあるのもまた人間かとしみじみ。今年母親を亡くした自分は、死ぬこととはどういう意味か、ぐるんぐるん考えながら観ていました。
木原は映画初主演だそうですが、存在感がとにかく素晴らしい。こんな最凶ヒロインが近くにいて除霊しにきたら迷惑だけど、普段のダメ人間ぶりや恋愛に疎い乙女のような部分など多面的な魅力さがたまりません。一方、タイトルからすると父親の哲史はさぞかしすごい人間と思いきや、この親娘の愛憎きわまりない関係もなんとも魅力。続編の構想があるそうなので、ぜひとも実現してほしいものです。
井坂監督は長編デビューでやりたいことを詰め込んだということもあり、凝ったかたちの演出が多いのも特徴。好き嫌い分かれるでしょうが、僕は満足しながらみてました。井坂監督や佐藤あかりの舞台挨拶をききましたが、さゆりは先日みたクオリアの優子(佐々木心音)と似たようなほんわかした役柄。しかし、優子と佐々木は全然別なのに、さゆりは当て書きして書いたように佐藤と雰囲気が似ていたのも興味深かったです。
【2023年に見た映画の最新記事】