作品情報 2023年日本映画 監督:小野峻志 出演:森山みつき、秋斗、藤田健彦 上映時間60分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:池袋新文芸坐 2023年劇場鑑賞441本
【ストーリー】
平凡な主婦の水原夏子(森山みつき)は夫の賢一(秋斗)が草野球に異常なほど熱中しているのが不安だった。監督の重野(藤田健彦)を神格化し、寝る間を惜しんで草野球チーム、東京メッツの練習に励んでいたのだ。
夏子の不安は的中し、練習中に賢一は死んでしまう。しかも、重野に多額の借金をしていたというのだ。重野から借金返済のために、東京メッツに入るよう命じられる夏子。実は彼女は超天才的な野球の才能の持ち主だったのだ。夫の敵と野球を憎んでいた夏子は次第に野球の快楽に溺れていく…
【感想】
あまりにもくだらないのですが、ギャグが結構つぼにはりまくりました。例えば、打倒夏子のための敵の秘策が、夏子の胸にぶつけるという「パイリーグボール」という時点で、小学生並みのギャグ連発だと分かるでしょう。重野も夏子にとんでもない魔球をさずけます。さらに大リーグ養成ギブスのぱっちもんの重野ギブス。野球のボールになって一体化することが野球を分かることという謎理論など、1970年代のスポ根をパロディーにしたような展開がひたすら続きます。森山の生真面目でひたむきな表情で練習に取り組む様子と、重野の表情を変えないイケボが、バカを大まじめにやっている分、笑いを誘います。野球未体験だそうですが、それなりにさまになっているフォームもいい。
予算のなさをカバーするためか、野球のシーンは歓声などの声でごまかしたり、1対1のホームラン対決など工夫を凝らした展開。夏子はショートカットで、名前の通り野球狂の詩とドカベンのヒロインを彷彿とさせ、水原勇気同様のアンダースロー。夏子の義妹で賢一の死の真相を突き止める春代(井筒しま)が、メガネにおさげの美少女というこれまた70年代マンガに出てきそうなビジュアルなうえ、柔道部でボールを受けるというドカベンパロディなのも笑いを誘います。ちなみに、舞台挨拶で井筒の素顔を拝見しましたが、ものすごい美人で、どうせならば劇中でも眼鏡をはずすシーンがあればよかったのに。
さらに、Hなシーンはないのですけど、制作側はロマンポルノもイメージしているそう。夏子の「後生だから体はやめて」というセリフに、思い切り噴き出してしまいました。それでいて夏子も春代も健康的な美しさにあふれています。無理やりのMV的なシーンは、この手の映画あるあるで、これまた僕の大好きな「発狂する唇」を思い出して、満足。まあ、最後の文章のあらすじで逃げるというのは、その内容も驚きがないのでがっかりですが、それまでが素晴らしすぎだったので気になりませんでした。
僕も子供のころ野球が好きで水島マンガや巨人の星に夢中になったことを思い出しました。字幕のフォントなども70年代風で僕のような中年をドストレートで打ちぬく快作です。インディーズで上映が限られてますので、観られる機会があればぜひどうぞ。そのかわり、あまりのくだらなさで怒ってもしませんが。
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