作品情報 2023年日本映画アニメ 監督:八鍬新之介 声の出演:大野りりあな、杏、役所広司 上映時間114分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ港北 2023年劇場鑑賞442本
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【ストーリー】
昭和14年。落ち着きがなくて小学校の担任から見放されたトットこと黒柳徹子(声・大野りりあな)。お母さん(杏)は自由な教育で知られるトモエ学園にトットを転向させる。小林校長(役所広司)はトットの話を何時間も聞いた後、「君はいい子なんだよ」と話しかけ、トットを感激させる。
校舎は電車を利用し、授業は好きなものを各自が行う。弁当は海のものと山のものの両方をもってくるなど、生徒の個性を最大限尊重した教育にトットはたちまちなじむ。しかし、戦争の影がどんどん強まり…
【感想】
原作は何十年か前に読んでいますがほとんど忘れています。2017年にドラマ化された「トットちゃん!」は観ているので、懐かしく思いました。小児麻痺の同級生、泰明(松野晃士)との友情、チンドン屋に授業中ついていく多動ぶり、なんといっても2016年生まれの大野りりあなが、黒柳徹子を彷彿とさせるしゃべりなのはすごいし、他の子役も生き生きと描かれています。
もう一つ、戦争が始まっても日常生活はそれまでと対して変わらないことを改めてみせられると、いろんな思いを感じてしまいます。音楽家の父(小栗旬)は開明的で、母はきれいな洋装。朝ごはんはトーストにサラダなど現代と変わりません。しかし、よくみると戦争の影は次第に濃くなります。他の作品にもありがちな国防婦人会の嫌がらせなどはもとより、映画ではあえてふれませんけど、なじみの駅員さんがいつのまにかいなくなり女性になっていたり、愛犬のロッキーが消えて首輪だけ残っていたり。
ドラマではロッキーを軍に供出したことや、父の出征はがっつり描いていましたが、本作ではさりげない描写ですましていることが、かえってごく普通の日常に戦争が入っているようで怖かった。もちろん、空襲シーンはがっつり描いており、トモエ学園の終焉=トットにとっての自由の終焉を観ていると心がいたくなります。
ただ、ある重要なシーンで深刻なBGMとともに、くどいほど出征兵士の行列や遺骨を抱えて泣く母親など反戦シーンを描いていたのはやりすぎかと。それからスポンサーだからかもしれませんが、学校前の朝日新聞販売店の看板もくどかった。また、戦争と関係ありませんがプールのシーンで正面から子供たちの裸を描いていたのには驚きました。男の子のおちんちんを描いていないというのも不気味で、なぜこういうカット割りをしたのかちょっと不信感も。
ともあれ、大野、役所、そして大勢の子役の名演もあって、学園生活は本当に心が温まります。現代でもこうした学校があれば救われる子供がいるだろうにと思わされました。小学生ぐらいから観てほしい名作です。
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