2023年12月23日

ティル

 1955年、ミシシッピーで旅行中の黒人少年が白人女性に口笛を吹いたために殺された事件の映画化。この事件のことは知らなかったのですが、アメリカの黒人差別の根深さには傍から見ていてもうんざりします。


 作品情報 2022年アメリカ映画 監督:チノイェ・チュク 出演:ダニエル・デッドワイラー、ジェイリン・ホール、ウーピー・ゴールドバーグ 上映時間130分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2023年劇場鑑賞447本




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 【ストーリー】
 シカゴの14歳の少年、エメット・ティル(ジェイリン・ホール)は夏休み、ミシシッピーの田舎町にある親戚の家に遊びに行った際、食料品店の女性に口笛を吹いたとして女性の夫たちに深夜拉致され、リンチのうえ殺された。


 シングルマザーのメイ三―(ダニエル・デッドワイラー)は、当初ミシシッピーで埋葬されそうになった遺体をシカゴに取り戻し、棺の蓋を開いて葬儀を行った。リンチで完全に変形した遺体を見て、多くの参列者が恐怖と怒りに震えた。やがて、犯人たちが逮捕され、裁判が始まったのだが…


 【感想】
 同じアメリカでも北部と南部では別の国のようです。メイ三―は息子にそのことを告げて、南部では行動に注意するように言っていました。しかし、口笛を吹いただけで殺されるというのは信じられない感覚。さらに、映画では取り上げていませんでしたが、ティルは吃音でそれが口笛と間違えられた可能性もあるそうです。


 たった一人の息子が理不尽な理由で殺害されたメイ三―の怒りと悲しみはすさまじいほどでした。そして、南部の人種主義的裁判がエメットを2度殺します。裁判官も保安官も完全な人種差別主義者。メイ三―の訴えはまったく取り上げてもらえません。これまたたった70年前なのに、ここまでひどい裁判が平然と行われていたことに驚きました。未だに黒人差別がなくならないのも納得できそうです。


 その一方で、史実をもとにしていることもあり映画は非常に生真面目な出来。ティルの殺害は公民権運動に大きな影響を与えましたけど、僕も含めて日本人観客には公民権運動といわれてもぴんとこない部分もあります。なんだかひたすら理不尽でひどいことばかりが続くのは見ていて苦しくなります。メイ三―が終盤の演説で言うように、他人事と気にも留めなかったことが自分に降りかかってくるので、差別に立ち向かわなければならないという理屈はわかるけれど、やはりここまで激しい人種差別はアメリカ人じゃないとわからないのかもしれません。


ダニエル・デッドワイラーは今年(2023年)のオスカーで候補確実といわれながら「トゥー・レスリー」のアンドレア・ライズボローを白人スターたちが推したために、ノミネートを逃したと伝えられています。そうしたことが起きること自体も未だに黒人差別が残っていることなのでしょう。ちなみに、ティルの死がきっかけとなった人種差別に基づくリンチを裁く反リンチ法の制定はなんと2022年。アメリカの闇といえそうです。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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