2023年12月24日

VOLTEX ヴォルテックス

フランス映画の「VORTEX〜ヴォルテックス」を観ました。「アレックス」「クライマックス」の鬼才ギャスパー・ノエ監督が、これまで描いてきた暴力、エロ、激しいBGMなどを封印して、介護に悩む老夫婦を淡々とドキュメンタリータッチで描いています。今まで観たことのある映画のなかでトップクラスの鬱と恐怖映画でした。戦争映画やホラーって自分には起きないだろうから、鬱や恐怖を描いていても絵空事。でも、老化だけは若死にしないかぎり絶対あてはまるから、とにかく怖かった。


 作品情報 2022年フランス映画 監督:ギャスパー・ノエ 出演:ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ 上映時間148分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2023年劇場鑑賞448本



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 【ストーリー】
 80歳になる映画評論家のルイ(ダリオ・アルジェント)はパリのアパートで妻のエリー(フランソワーズ・ルブラン)と暮している。元精神分析医で、ルイの健康管理もしていたエリーだが認知症となり、どんどん症状は悪化していく。


 一人息子のステファン(アレックス・ルッツ)も映像業界で働いしているがろくな仕事がないうえ、妻との仲も悪く幼い息子のキキ(キリアン・デレ)を育てていて生活に余裕がない。ステファンは自分では介護ができないと、2人に老人ホームに入ることを提案するのだが…


 【感想】
ずっと画面が2分割されて、片方が夫、片方が妻をずっと追っているのが不気味でした。例えば、夫がテレビを見ているときに認知症が進んだ妻が別の部屋でおかしな行動をしているのを、同一のスクリーンで逐一観客に伝えるのです。夫婦で同居していても相手が何をしているのかわからない。かといって四六時中おかしくないか監視するのも不可能です。長回しが多く、認知症の人が変な行動をどうしていくのかリアルタイムのように感じ取れます

ルイは、妻のことを想っていますが生活能力が皆無。夫は映画評論家、妻は元精神科医と裕福な生活をしていたのに、贅沢をしたのか(夫には愛人がいた)貯金はなくて在宅介護士を雇えません。ステファンも彼自身は真剣なんですが、人生としては負け組な状況がだんだんわかってきます。幼い子供の叫び声があんなにイラっと来るとは超意外でした。

介護や死を描いた作品は結構あるのですけど、どこか老夫婦の愛情とか死別を美しく描いています。本作ほどリアルに汚く描いた作品は観たことがない。料理していたことを忘れて火事になりかけたり、自分が認知症だと頑として認めなかったり、認知症の介護をしていた人なら思い当たることばかりです。母親が時々ふっと正気にかえり、死にたいと本心から願うところや、頑固で老人ホームに入るよう子供から勧められると感情的になって怒るシーンなど、僕自身が介護していたときの親の様子にそっくりでした。

若い観客にはピンとこなかったようですが、中年を過ぎると死ぬこと以上に老いることがいかに怖いか実感します。ぶっちゃけ安楽死が認められればいいのにとすら思えました。BGMもほとんどなく、ひたすら悪夢のような時間が過ぎていきます。

 アルジェント、ルブランともに本当の夫婦をドキュメンタリーでとっているような自然な演技。2時間半ちかくと長いですが、緊張感は半端なくて一瞬も目を離すことができずに、見つめ続けていました。


posted by 映画好きパパ at 06:32 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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