2023年12月24日

ポトフ 美食家と料理人

 料理をテーマにした映画はたくさんありますが、たいていはシェフなどの人間関係のほうに重きをおいています。ここまで徹底的に料理にこだわった作品は異例といえましょう。


 作品情報 2023年フランス映画 監督:トラン・アン・ユン 出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル、ボニー・シャニョー=ラヴォワール 上映時間136分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2023年劇場鑑賞449本




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 【ストーリー】
 19世紀末のフランスの片田舎。地方領主のドダン(ブノワ・マジメル)は美食界のナポレオンと呼ばれるほど、グルメに情熱を掛けていた。彼を支えていたのが女性調理人のウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)。2人は20年近くも協力して独創的な料理を作り上げてきた。ドダンは彼女に思いを寄せるが、ウージェニーはプロポーズを何度も断り続けていた。


 料理を手伝いにきた少女ポーリーヌ(ボニー・シャニョー=ラヴォワール)に大変な才能があることを見抜いた2人は、彼女を雇い一流の料理人にするべく特訓する。折からユーラシア皇太子がフランスを訪れ、ドダンをディナーに招いた。贅を凝らした料理だが金に飽かして大量に作られており、気に入らなかった彼は、返礼に究極のポトフをふるまおうと計画する。


 【感想】
 トラン・アン・ユンらしい、美しい田園風景とナチュラルな美に凝った作品。ただ、ストーリーはそれほど深いものがあるわけでなく、ただ、美味しそうな料理の数々とそこに情熱を掛けた2人の男女+少女の様子が描かれていきます。正直、食後にみて良かった。お腹がすいているときに観たら美食の数々に我慢できなかったでしょう。野鳥を食べるときにナプキンで頭を隠して食べるなど、当時のフランスのマナーでしょうか、謎の宴会作法も興味をわかしてくれました。料理監修はミシュラン三つ星シェフのピエール・ガニェールだそうで、本当に美味しそうな料理から、見たこともない奇天烈な料理まで、目で楽しめました。


 下ごしらえ、材料を切るところから、調理して盛り付け客に出す。そして客の満足げな表情と台所でポーリーヌに具材をあてさせながらおいしくいただくウージェニー。この一連の過程をひたすら丁寧に取り上げていて、他の映画にありそうな恋愛シーンなどはごそっと削っています。BGMもなくて、具材を切る包丁の音や表の野鳥や猫の鳴き声など自然の姿を大切にするのもユン監督らしい。調理シーンはワンカットで、どうやって撮影したのかと不思議なほど。


 ポトフというフランスの家庭料理を外国の皇太子に提供しようというのは、もしかすると無礼と処分をうけるかもしれません。しかし、食に対する自信と矜持のあるドダンとウージェニーは、成金のような食事ではなくて究極の美食を家庭料理で提供したいという、美味しんぼのような展開です。そこまで丁寧に料理シーンを描いたことが実ります。単なる男女の恋愛関係よりも、究極な食事を求める同志のような関係がすがすがしい。そして、そこにある意味深い愛情が存在する。そして、ようやく次の段階に進んだ時の展開も驚きです。


 ジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメルはフランスを代表する俳優同士で、一時は付き合っていて子供も産まれたのですが破局しているのですよね。そんな2人が、親しいけれど恋愛関係とは違う不思議な関係を演じているというのも映画ファンとしては興味深かったです。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2023年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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