作品情報 2023年日本映画 監督:緒方貴臣 出演:伊礼姫奈、辻千恵、筒井真理子 上映時間62分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:横浜シネマリン 2023年劇場鑑賞460本
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【ストーリー】
女子高生の佐々木音羽(伊礼姫奈)は幼いころ骨肉腫にかかり、左足を切断。学校にもなかなか行けずに入退院を繰り返すうち、仲良くなった看護師の八神桜(泉まりん)からメイクの楽しさを教わり、ファッションモデルになることを夢みていた。
当初は義足のモデルとして話題になったが、マネージャーの唯(辻千恵)が取ってくる仕事は義足を隠して撮影するものが多かった。だが、義足のデザイナーから「義足は障害の象徴でなく個性だと思ってほしい」と言われたことで…
【感想】
冒頭、音羽の幼いころからのストーリーが淡々と始まっていき、タイトルバックへとつながります。ある意味分かりやすく感動する内容なんですが、これだったら緒方監督でなくてもと内心思ったところ、しっかり仕掛がありました。62分の中編なのに、何カ所も驚かせるサプライズが入っているのは巧い。2回目にみればまったく印象が変わってくるでしょう。
タイトルやあらすじからすると、日本によくある感動ポルノといわれるような、単に泣ける話を想像してしまいます。しかし、音羽は足が義足なだけの普通の女子高生。義足を個性ととらえるならば、うれしいこと悲しいこと、長所も短所も障害者だからあるわけでありません。障害ポルノで障害者や家族を聖人のように描くことへの痛切な皮肉だと思いました。
劇中でSNSを多様することや、場面転換で暗転を多様するところは「飢えたライオン」のようで不穏になります。何でもないような日常の風景をワンカット長回しでとらえることも多く、観客が集中して、自分なりに咀嚼、考えなければならない作品だということが伝わってきました。
ファッション業界の大御所役に筒井真理子が起用され、さすがの貫禄をみせています。それ以外の俳優は知らない人ばかり。正直、伊礼の顔を知らなかったから序盤に素直にびっくりできたともいえ、インディーズ映画の長所ともいえましょうか。非常に誠実、真剣な作りなだけに、見ている方にも緊張、真摯さを求められ、集中力が欠如する配信でなく、駆け込みでしたが映画館でみられて良かったです。
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