作品情報 2019年アメリカ映画 監督:ケリー・ライカート 出演:ジョン・マガロ、オライオン・リー、トビー・ジョーンズ 上映時間122分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:横浜ムービル 2024年劇場鑑賞2本
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【ストーリー】
開拓時代のオレゴン。気弱な料理人のクッキー(ジョン・マガロ)は森でトラブルから逃亡中の中国移民キング・ルー(オライオン・リー)と偶然、出会って意気投合。やがては狭い小屋に一緒に住むことになる。
将来は都会に出てホテルを作りたいとの夢を持つクッキーだが、元手がない。折から金持ちの仲買人(トビー・ジョーンズ)が、オレゴンの開拓地では初めてとなる牛を持ち込んだ。クッキーとキング・ルーは夜中に牧草地に忍び込んで盗んだ牛乳でドーナッツを作ったところ、美味しいと評判になるのだが…。
【感想】
人の命など吹けば飛ぶように軽い西部開拓時代。なにしろ牛泥棒は死刑になるほどで、気性の荒い連中が幅をきかせる。気弱な人には生きづらかったろうなと思います。貧しい弱者が夢をかなえようと必死にあがくすがたはなんとも切なく、むなしい。さらに、人種差別が当たり前の時代で、アジア人というのは見下される対象なわけです。
そんな2人がクッキーの調理能力のお陰でとんとん拍子に巧くいくのはみていてスカッとします。しかし、大本が牛乳泥棒で現在の日本と違って牛泥棒が死刑になる世界ですから、もうちょっとやりようがあったろうに。まあ人間、順調な時にはつい欲をかきすぎて痛い目に合うなんていうのは現代でも同じでしょうけど、夢を語り合う2人の表情が流れつつ、不穏な動きが続くのは見ていて胃が重たくなっていきます。
冒頭は現代のシーンというのもやりすぎというか、その意味がラストに近づくほど想像がついてくるだけに不穏でなりませんでした。結局、世の中は強いものはより強く、弱いものはより虐げられるというのが現実。せめてミスをしないとか、運がこちらにつくとかあれば良かったのですが。
しかも、2人の人種を超えた友情が尊い反面、カネだけで結びついたドライな関係だったらここまでならなかったのにと思えてなりませんでした。その分、二人のはにかんだような笑顔や、互いを思いやる仕草などが尊くてたまりません。ノースターのため2人の表情が余計にリアルに感じました。また、主要登場人物に女性がおらず、かといって同性愛でもない、人種を超えた友情をしっかり打ちだしているのが、この映画を良作たらしめるゆえんでしょう。
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