2024年01月20日

燈火(ネオン)は消えず

100万ドルの夜景と言われた香港のネオンですが、共産党政権下では違法となって9割が撤去されたそうです。亡くなった老ネオン職人の未亡人の目を通して、古き良き香港と青春の思い出を振り返った感動作。


 作品情報 2022年香港映画 監督:アナスタシア・ツァン 出演:シルヴィア・チャン、サイモン・ヤム、セシリア・チョイ 上映時間103分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿  2024年劇場鑑賞17本




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 【ストーリー】
 ネオン職人だった夫のビル(サイモン・ヤム)が亡くなり、残された妻のメイヒョン(シルヴィア・チャン)は気の抜けた日を送っていた。一人娘のチョイホン(セシリア・チョイ)は結婚を機にオーストラリア移住を考えていたが、まだそのことを打ち明けられずにいた。


 ある日、夫の工房を整理、売却しようと訪れたところ、見知らぬ青年レオ(ヘニック・チャウ)がおり、ビルの弟子だという。とっくに引退したと思っていた夫に弟子があり、しかもやり残した仕事があると知ったメイヒョンはレオの助けを借りてネオン作りを再開しようとするのだが…、


 【感想】
 古き良き時代に香港に行ったことがないのが残念だとしみじみ。それでもジャッキー・チェンの映画をはじめ数々の作品でみた香港のネオン街。本作でも当時の風景が流され、そのきらびやかさと現在の味気のない対比は香港に行ったことがなくても惜しいなあと思いました。パナソニック、東芝といった日本の家電メーカーの派手なネオンがあったのも、日本のメーカーが世界を席巻していたころを思い出させて日本人にもキュンとします。なにしろビルはナショナル(現パナソニック)のネオンでギネスブックに載ったという設定ですから。


 同時に夫婦関係、親子関係の難しさも考えさせられました。昔気質のビルは仕事の様子をあまり妻に話さず、メイヒョンは初めて知ることばかり。一方で、ネオンが禁止されてから多額の借金を抱えることになります。また、チョイホンとのすれ違いもいまふうで、借金までして娘の学費を払う必要はないという昔気質のメイヒョンに、親子の情はありつつも窮屈な人生を強いられたチョイホン。建築士として活躍していますが、香港の閉鎖性に嫌気がさし、早くオーストラリアに移住したいと考えています。


 また、レオもネオンの弟子がゆえに食っていけず、家賃も払えずに工房に泊まり込むというのもリアル。香港の若い世代が共産党の本格的な支配によって、経済的にも心情的にも大変な目に合っている様子が伺えます。香港というか中国の映画にしてはめずらしく、警察がネオンを取り締まるという嫌な役をしていたし。ネオンが題材ですが、香港のかつての自由が失われたことを惜しんでいるということが十分にみてとれます。


 アナスタシア・ツァン監督の初長編で、彼女はフランスのソルボンヌ大学卒業ですから現代の香港にいろいろ言いたいことがあるのでしょう。また、この作品にシルヴィア・チャン、サイモン・ヤムという大ベテランが出演し、金馬奨の主演女優賞受賞やアカデミー賞の香港代表になっているのですから、表立っては共産党に反抗できない香港の映画人の意地ともいえる作品かもしれません。


 同時にエンディングロールでは実在のネオン職人の名匠や現在ではアーティストとして活躍する中堅どころなどが、手掛けたネオンとともに紹介されており、古き良き香港への思いが深く伝わってきました。若干テンポが緩やかなところがちょっと僕には合わなかったけど、それでも観て感動した作品です。


posted by 映画好きパパ at 19:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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