2024年01月21日

ミツバチと私

 スペインの田舎町にやってきた8歳の性同一性障害の少年一家のバカンスを描きました。田舎でも一方的に性別を押し付けようとしない一方で、自分の子供がそうなったときのおろおろぶりはいかにもリアル。大きな事件は起きない分、心にしみいる感じです。


 作品情報 2023年スペイン映画 監督:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 出演:ソフィア・オテロ、パトリシア・ロペス・アルナイス、アネ・ガバライン 上映時間128分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷  2024年劇場鑑賞18本



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 【ストーリー】
 夏のバカンスでフランスから親戚がいるスペインの田舎町でやってきた少年アルトール(ソフィア・オテロ)は男性風の本名で呼ばれるのを嫌がりココと名乗り、外見も少女そっくりだった。母のアネ(パトリシア・ロペス・アルナイス)は「男も女も関係ない」などと性別について突き詰めることから目をそらしていた。


 叔母のルルデス(アネ・ガバライン)の養蜂場でミツバチの世話をしたり、地元で信仰される聖ルチアの話を聞いたり田舎の自然や風土と触れ合ううちに心は癒されていく。だが…


 【感想】
 ソフィア・オテロがベルリン映画祭で史上最年少の8歳で主演俳優賞受賞が話題になった作品。名子役という言葉を超えて、本当に自分の性同一性障害に悩む幼い子供になり切っていて瞠目させられました。友人もいないバカンス先で頼りになるのは親や兄弟なのに、最愛の母親に自分の悩みを正面切って打ち明けられないつらさはみていて伝わってきます。


 ただ、僕も親の立場だからわかるのだけど、性同一性障害について知っていて、理性では差別してはいけないと思っても、実際に自分の子供がそうだったらやはり動揺しますよね。子供を傷つけまいとして目をそらし、かえって親子の対話をなくして悩みを聞き取れない悪循環はなんともいたたまれませんでした。


 一方、ココの親戚や田舎の子供たちも、ココが女の子の外見だったり、プールの女子更衣室にはいっても批判したりしません。ただ、いくら性同一性障害でも9歳になっている男児が女子更衣室に入ることの是非を問われないのは、今の日本のリアルで言うと論争になりそう。スペインのほうがレインボーパレードをはじめ日本よりLGBTQに理解があるのかもしれません。


 スペインの田舎の美しい風景や養蜂の姿は、それだけで癒されます。ココにとってもそうだったことがよくわかります。日常の出来事をぶつ切りのようにつなげていくという手法は個人的にはちょっと苦手ですが、それを上回る豊かな自然と子供の苦悩というテーマにひきつけられました。エンドロールで役名がアルトールでもココでもなくてルチアになっているところに、監督の優しい目線が感じられました。
posted by 映画好きパパ at 08:31 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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