作品情報 2023年韓国映画 監督:オム・テファ 出演:イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン 上映時間130分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ湘南 2024年劇場鑑賞21本
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【ストーリー】
突然の世界的な大災害で文明は崩壊。ソウルの古ぼけた団地「皇宮(ファングン)アパート」だけは奇跡的に倒壊をまぬかれる。住民たちは食料や水を分配して生き残ろうとするが、極寒のなか外部から被災者たちがアパートに押し寄せて大混乱に陥る。
そんななか、外部の被災者が住民を刺して放火するという事件が発生。命がけで消火にあたったヨンタク(イ・ビョンホン)は住民から代表に選ばれ、消火を手伝ったミンソン(パク・ソジュン)が防衛隊長として補佐を務めることになった。ヨンタクは治安維持のため住民以外を強引にアパートから追い出した。小さな子供にもひどい扱いをするヨンタクたち住民の姿にミンソンの妻のミョンファン(パク・ボヨン)は心を痛める。当初は小心者だったヨンタクは代表という権力を握ったことで豹変し…
【感想】
古来からカルアデスの船板という言葉があります。船の遭難時に他人を押しのけて板につかまった男が無罪になったという話で、自分の命が危ない場合は他人に危害を加えても緊急避難が認められるという論理です。本作ではアパートの住民たちが部外者を追い出すことはあきらかに緊急避難にあたるわけです。どんどん被災者を受け入れていたら水、食料、住居すべて失ってしまうわけですから。
ただ、平常時の心理としては人間は助け合うもので、まして小さな子供やお年寄りを大切にするのは当然というものがあります。ミョンファンは看護師として住民の安全を守る一方、避難民の子供と仲良くなるなど心優しい女性に描かれており、そういう理性的な立場の象徴といえます。
でも、いざ自分がその場にいたら、身の安全を守ってくれるヨンタクのほうがはるかに信頼ができるわけです。逆に被災民の立場になったら、ヨンタクを打倒しなければならないわけで、いずれにしても文明が崩壊するような大災害の時点で、正論ばかりで動こうとしない彼女にイライラしました。
一方、ヨンタクがリーダーとして次第に強権をふるうようになるのには理由があります。家というものに人一倍執着しているからこそ、部外者をゴキブリ呼ばわりして殺傷するのもいといませんでした。平時には小心者で社会的弱者の彼が、家に執着するがゆえに狂っていく様子はあわれであり、イ・ビョンホンの序盤のおどおどした演技から中盤の独裁者としての頼れるリーダー、そして終盤の表情などの変化は見事としか言えません。
僕も含めて大部分の人間はミンソンのように心根は優しくても、自分が一番大切で強いものに流されていくのだなと見ていて思いました。映画では大災害ですが、移民をめぐる世界的な騒動なんかをみていると、そういう人間の社会における醜さの縮図が非常にリアルだと思いました。それだけに、ラストがもったいなかったな。
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